重埴土に限らず砂壌土まで湿害回避ができるダイズ耕うん同時畝立て播種技術

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要約

耕うん同時畝立て播種技術は埴土から砂壌土まで適用拡大できる。重埴土や軽埴土に加えて砂壌土までの幅広い土性の湿潤条件の現地営農規模で改良型アップカットロータリによる耕うん同時畝立て播種技術を実施すると、湿害が回避されて苗立ち数が向上し、収量が増加する。その効果は、地力の低い圃場においても発現する。

  • キーワード:ダイズ、耕うん同時畝立、土性、地力、湿害、アップカット
  • 担当:中央農研・北陸水田利用部・作業技術研究室
  • 連絡先:電話025-526-3236、電子メールhosoh@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究、関東東海北陸農業・北陸・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

北陸地域の重粘土転換畑では、播種時期の湿害や過乾燥、生育前半の湿害により、ダイズの生育が停滞し収量が低下する。そこで、耕うん同時畝立て播種技術を開発し、新潟県上越地域の重埴土を主とする排水不良重粘土圃場を対象に、収量が増加するなどの湿害回避効果を確認した(平成15年度成果情報)。本技術の普及拡大のために異なる土性条件への適用拡大が強く望まれたため、栽培方法の異なる農家・生産組織自らが耕うん同時畝立て播種作業を行う現地実証試験を多様な土性と広範な地域で実施し、その結果に基づいて作業性、苗立ち、収量性などの効果が発現する土壌条件、発現効果の程度等を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 耕うん同時畝立て作業技術は、粘土が多く土壌含水比が高い状態の重埴土に加えて軽埴土や粘土の少ない砂壌土でも、ダイズ1列毎に高さ10~15cm程度の畝を作成できる。土壌含水比が高い状態での作業速度は、重埴土では0.25m/s程度であるが、砂壌土では、0.4m/s程度のさらにはやい速度で作業を行うことができる(表1)。
  • 農家・生産組織の慣行栽培(通常耕うん後播種)で、苗立ち数が約10本/m2以下に低下する軽埴土や砂壌土の湿害発生条件では、耕うん同時畝立て播種により苗立ち数が向上する(図1)。
  • 軽埴土で畝立てを行った場合、慣行栽培に比べ百粒重は同等かやや増加し、苗立ち数の向上と生育中の湿害回避により、坪刈り収量は最大約40%(表1)程度増加する。さらに主茎長が長くなるとともに最下着莢高が高くなる。
  • 耕うん同時畝立ての畝高さを15cmにすると、軽埴土や砂壌土ともに倒伏程度が大きくなる場合がある(表1)ため、倒伏が懸念される圃場では、畝高さは10cm程度が良い。
  • 畝立て栽培では根粒の活性化による窒素固定量の増加等により、地力の少ない圃場でも収量は高位で安定する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 耕うん同時畝立てが適用できる土壌条件とその効果を営農現場での播種から収穫までの実際の栽培を通して明らかにした成果であり、今後の耕うん同時畝立て技術普及範囲拡大や技術指導に利用できる。
  • 地力が低い圃場でも畝立ての効果はあるが、有機物施用等の地力増強が基本技術として重要である。
  • 中耕・培土作業は慣行に準じて行う。中耕・培土作業は慣行に準じて行う。

具体的データ

表1 異なる土性における耕うん同時畝立て播種大豆の生育収量と作業性

 

図1 土壌の種類と苗立ち数 図2 地力窒素と畝立てによる収量増加の関係

その他

  • 研究課題名:低湿重粘土における水稲後大豆の高品質安定栽培体系の確立と評価
  • 課題ID:03-02-02-01-09-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:細川 寿、高橋智紀、帖佐 直、大嶺政朗
  • 発表論文等:細川(2004) 農機誌 66(5):14-16.