RTK-GPSを用いた農用車両の滑り率連続計測手法

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要約

車軸回転に起因するパルス信号から車輪周速度を求め、GPSから得られる速さを実際の速さとすることで連続的に農用車両走行時の滑り率(進行低下率)をモニタリングする。それぞれの情報はマイコンボードを用いた計測補助装置により容易に統合できる。

  • キーワード:滑り率、GPS、マイコンボード、データ統合
  • 担当:中央農研・北陸水田利用部・作業技術研究室
  • 連絡先:電話025-526-3236、電子メールtchosa@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・作業技術
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

滑り率(進行低下率)は圃場における作業機性能試験を行う際に頻繁に計測される。特に重粘土圃場においては圃場状態によって作業機械の走行性が大きくが変化するため、作業機の走行性を示す重要な計測項目である。通常滑り率を求めるには、無負荷時の車輪1回転の進行距離と実際の進行距離とを計測する必要がある。そのため、慣行の測定方法では計測者が作業車両に付き添う必要があり、連続して滑り率を算出することは困難である。そこでGPSと計測補助装置を用いて、滑り率を連続的に計測するシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 滑り率を計測するシステムは、車軸回転計、RTK-GPS(CEP2cm)、データ統合を行なう計測補助装置、PDAで構成される(図1)。回転計は車軸に直結した歯車の回転に反応し、計測システムでは単位時間当たりのパルス数に応じた車輪周速度を算出する。実際の速さはRTK-GPSからの情報を利用する。計測補助装置によりそれぞれの情報を統合し、その結果をPDAに記録する。その速さの比較から連続的な滑り率を計測する(図2)。
  • データ統合を行う計測補助装置はシリアルポートを介して得られるGPS受信機からの出力信号のタイミングに合わせて、同時に計測中のパルス数をカウントし、その結果を受信したGPS信号と合わせてシリアルポート(RS232C)から出力する。これによりGPS情報とパルスカウントの結果が統合される(図3)。以上の処理は計測補助装置内のマイコンボードで行う。GPS情報を受信するタイミングをトリガとするため装置の設定に特別の操作は不要で、計測機器を接続するだけでデータを収集できる。
  • GPSによる速さ認識の誤差やピッチングの影響など補正するために10m程度の移動平均から滑り率を算出する。本手法による滑り率は、慣行の方法と同等の精度である。(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 過剰な滑り率が発生したときに警報を発したり、滑り率に応じた資材散布を行うなどの作業機械の制御に活用できる。
  • 車軸回転に応じた信号出力機能を有するトラクタやコンバインであれば、回転計を取り付ける必要はなくその信号を使用することもできる。その際には、出力信号のレベルを事前に確認する必要がある。
  • 平坦地での直進方向の滑り率のみを計測し、横滑りやローリングには対応しない。

具体的データ

図1 システム構成 図2 連続的な滑り率の計測例

 

図3 計測補助装置動作の概要 図4 GPS による連続計測と慣行法との比較

その他

  • 研究課題名:重粘土水田における車両走行性の評価技術の開発
  • 課題ID:03-11-06-01-01-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:帖佐 直、大嶺政朗、細川 寿、柴田洋一、小林 恭
  • 発表論文等:1)特許出願(特願2004-135375)