耕土下層における主要水田一年生雑草種子の生存期間

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要約

耕土下層に埋没した一年生雑草種子は、常時湛水条件では常時畑及び夏季湛水条件より早く死滅する。常時畑及び夏季湛水条件では、タイヌビエ及びコナギ種子は17年以内に死滅するが、キカシグサ、アゼナ及びタマガヤツリ種子は27年間生存し続ける。

  • キーワード:耕土下層、種子、水田一年生雑草、生存、土壌水分
  • 担当:中央農研・耕地環境部・水田雑草研究室
  • 連絡先:電話029-838-8953、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物、共通基盤・雑草
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

水田における雑草防除を適切に行うためには、発生が予測される雑草草種に対して有効な除草剤等除草手段の選択が重要になるが、そのためには主な発生源である土中における種子の動態、特に種子の寿命に関する情報が必要となる。耕土層においては一年生雑草8種を対象とした暖地の研究事例があるが、地域、土中での種子の存在位置等の異なる条件での情報を更に集積する必要がある。そこで、耕起による攪乱がほとんどなく、環境変動が少ない耕土下層に混入された主要水田一年生雑草5草種の種子の生存期間を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 主要水田一年生雑草種子の生存状況は土壌水分条件により異なり、常時湛水条件では常時畑及び夏季湛水条件より早く死滅する(図1)。
  • タイヌビエ種子は埋土後4年間、コナギ種子は5年間、各土壌水分条件ともに高い生存率を維持する。その後、常時湛水条件で早く生存種子が減少するが、各土壌水分条件ともに17年以内に死滅する(図1)。
  • キカシグサ及びアゼナ種子は常時湛水条件では3年以内に死滅するのに対し、常時畑及び夏季湛水条件では27年後でも死滅しない(図1)。
  • タマガヤツリはキカシグサ及びアゼナとほぼ同様の傾向を示すが、常時湛水条件では10年後においても死滅しないものがある(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 雑草種子の死滅要因を解明するための基礎的知見となる。
  • 長期的観点からみた雑草防除法を検討する上での参考資料となる。特に、基盤整備や深耕などで下層土が土壌表層に持ち込まれる場合に重要な知見となる。
  • 本結果は関東地域でのポット試験において、土壌を攪乱しなかった耕土下層(地表下18cm)で得られた知見である。
  • タイヌビエを除く4草種の種子の生死は最適条件での発芽試験において、3年(回)連続して発芽がみられなかった場合に全種子の死滅と判断した。

具体的データ

図1 耕土下層に埋設された主要水田雑草種子の発芽率の年次推移

その他

  • 研究課題名:水田土中繁殖体の土中での動態の解明と制御法の開発
  • 課題ID:03-05-03-*-02-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1974~2004年度
  • 研究担当者:川名義明、千坂英雄、伊藤一幸、児嶋 清、古谷勝司、片岡孝義、宮原益次、森田弘彦、
                      渡邊寛明、小荒井晃、芝山秀次郎、牛木 純