イネ白葉枯病菌ファージOP1及びOP2の全ゲノム情報

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要約

イネ白葉枯病菌ファージOP1、OP2のゲノムはそれぞれ全長43,786bp、46,714bpの2本鎖DNAからなり、OP1で59個、OP2で62個のタンパク質をコードする遺伝子を含む。

  • キーワード:イネ、イネ白葉枯病、バクテリオファージ、ゲノム解析
  • 担当:中央農研・病害防除部・細菌病害研究室
  • 連絡先:電話029-838-8931、電子メールyasinoue@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

バクテリオファージ(以下ファージ)は厳密な宿主特異性をもっていることから、これを作物細菌病の防除に利用すれば、生物生態系を攪乱せずに植物病原細菌だけを制御する手法の開発が期待できる。しかし、ファージの宿主特異性は同一種の病原細菌内にも認められることから、ファージ耐性菌の存在が実用化する際の最大の障害となっている。一方で、ファージ耐性菌に対して溶菌活性を示す変異ファージ(宿主域変異体)も出現することが知られており、このようなファージを上手く利用すれば、ファージ耐性菌の存在下でも溶菌作用を維持することが可能となる。そこで、ファージの宿主特異性とその変異に関わるメカニズムを解明する目的で、ファージとその宿主細菌との相互作用が詳細に調査されているイネ白葉枯病細菌ファージOP1及びOP2の全ゲノムを解読し、遺伝子情報を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • OP1のゲノムは全長43,786bpの2本鎖DNAからなり、59個のタンパク質をコードする遺伝子を含む(表1、図1)。
  • OP2のゲノムは全長46,714bpの2本鎖DNAからなり、62個のタンパク質をコードする遺伝子を含む(表1、図1)。
  • OP1及びOP2には大腸菌のλファージ及びそれに類縁するファージの尾部繊維をコードする遺伝子と相同な遺伝子が存在する。λファージでは尾部繊維が大腸菌への感染に重要な役割を持つことから、この遺伝子はイネ白葉枯病菌への感染に関係すると推測される。
  • OP1及びOP2には溶菌に関与する酵素、DNA分解酵素、DNA及びRNA合成酵素、他遺伝子の発現調節に関係する遺伝子などが存在する。

成果の活用面・留意点

  • OP1、OP2のゲノム情報はDNA Data Bank of Japan (DDBJ)上に公開する予定である。
  • 尾部繊維をコードする遺伝子を宿主域変異体間で比較することで、どのような遺伝子の変異が宿主域の違いに関係するのかが明らかになる。

具体的データ

表1 OP1、OP2 の遺伝子予測の結果

 

図1 OP1、OP2 の遺伝子地図

その他

  • 研究課題名:イネ白葉枯病をモデルとした植物病原細菌-ファージ間相互作用の解明
  • 課題ID:03-07-01-01-18-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:井上康宏、畔上耕児、松浦貴之、小原達二