斑点米カメムシ類は特定の発育段階の籾を好み種特有の加害部位がある

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要約

イネカメムシ、クモヘリカメムシ、アカスジカスミカメは、胚乳が縦伸長途中から幅伸長途中の籾を主に加害し、ホソハリカメムシはより登熟が進んだ籾も加害する。籾の加害部位は、カメムシの種による特異性が高い。

  • キーワード:斑点米カメムシ類、籾、加害、登熟段階
  • 担当:中央農研・虫害防除部・虫害防除システム研究室
  • 連絡先:電話029-838-8838、電子メールthiroaki@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)、共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

水田においてイネの登熟段階が斑点米カメムシ類の発生消長や加害に与える影響は、カメムシ類の発生時期や被害量の予測の研究を進める上で重要な情報となる。個々の籾の開花日や登熟速度は穂内の着粒位置によって異なるため、水田内には異なる登熟段階の籾が同時に存在している。そこで、籾の登熟段階の違いがカメムシの加害に与える影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • イネカメムシ、クモヘリカメムシ、アカスジカスミカメによる総被害籾数は出穂後の日数が経過するほど減少するが、ホソハリカメムシでは出穂後の日数による被害籾数の変化は少ない(図1)。
  • 一穂中の籾をその着粒位置に基づいて開花が早い順にABCの3段階に区分し,加害を受けた籾がどの位置に存在したかを調査すると、出穂後7日に放飼した場合、被害籾はAやBの位置に存在する割合が高いが、出穂後14、21日に放飼した場合、被害籾はCの位置に存在する割合が高い(図1)。高い割合で被害籾が存在した区分には、胚乳が縦伸長途中から幅伸長途中の状態の籾が多い。
  • これらのことからイネカメムシ、クモヘリカメムシ、アカスジカスミカメは、穂の中でも胚乳が縦伸長途中から幅伸長途中の状態の籾を主に加害し、ホソハリカメムシはより登熟が進んだ籾も加害する。
  • 籾におけるカメムシの加害部位は、種による特異性が高い。イネカメムシでは小穂軸、クモヘリカメムシでは鉤合部、アカスジカスミカメではふ先、ホソハリカメムシでは籾全体で吸汁行動が行われる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 斑点米カメムシ類の水田内での発生消長や加害時期、被害量を研究する上で参考となる。
  • 割れ籾の場合、加害される籾の発育段階や加害部位が異なってくる可能性がある。

具体的データ

図1. 斑点米カメムシ類4種の平均被害籾数

 

図2 斑点米カメムシ類4種によって吸汁行動が行われた位置

その他

  • 研究課題名:発生予察を利用した主要害虫防除技術の実証
  • 課題ID:03-08-02-*-08-03
  • 予算区分:IPM
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:竹内博昭、石崎摩美、渡邊朋也、鈴木芳人
  • 発表論文等:1) 竹内・鈴木(2003) 関東東山病虫研報 50: 123-126.
                      2) 竹内ら(2004) 応動昆 48: 39-47.
                      3) 竹内ら(2004) 応動昆 48: 281-287.