コナガコマユバチの寿命と産卵能力は糖給餌によって著しく増加する
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
コナガの土着重要天敵であるコナガコマユバチは糖類を利用できるかどうかで寿命、日当たり産卵数、生涯産卵数に大きな違いが見られる。
- キーワード:コナガコマユバチ、コナガ、糖給餌、寿命、日当たり産卵数、生涯産卵数、IPM
- 担当:中央農研・虫害防除部・生物防除研究室
- 連絡先:電話029-838-8846、電子メールaeiou@affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・病害虫(虫害)、関東東海北陸農業・関東東海・病虫害(虫害)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
総合的病害虫管理(IPM)において、土着重要天敵の有効利用は基幹技術の一つであるが、寄生蜂では圃場内に採餌場所が存在しないために本来の産卵能力を発揮できないことも多いと考えられる。施設内の観察でも採餌場所が存在しない時には、侵入した、あるいは放飼された寄生蜂が翌日には多く死んでしまうことが確認されている。特にコマユバチ科の寄生蜂は寄主体液摂取を行わない種が多いため、その影響が大きいと考えられる。しかし、給餌による寄生蜂の潜在的産卵能力向上についてはこれまでほとんど定量化されていない。そこで、アブラナ科野菜の重要害虫であるコナガの土着重要天敵コナガコマユバチの産卵能力が、給餌によりどの程度影響されるのかを検討する。
成果の内容・特徴
- コナガコマユバチに糖類を給餌することによって、給餌しない場合に比べて雌雄共に寿命に約8倍の違いが見られる(図1)。交尾の有無は生存期間に影響しない。また、雌では蜂蜜を与えた場合の方がショ糖を与えた場合より寿命が延びるが、雄ではいずれを与えても寿命は変わらない。
- 羽化後24?28時間の既交尾コナガコマユバチ雌成虫に一定量のコナガ幼虫を24時間与えたとき、糖給餌がされない場合にはコナガ幼虫数が10頭前後で日当たり産卵数が頭打ちになるが、糖給餌によって日当たり産卵数はコナガ幼虫数の増加に応じて増加し約20頭にまで達する(図2)。また、蜂蜜とショ糖で寄生数に有意な差は見られない。
- 50%蜂蜜を与えることにより生涯産卵数は93.7±4.9(平均値±標準誤差)となる。一方、無給餌の場合は8.1±3.3となり、糖給餌が生涯産卵数を大きく左右することがわかる。
成果の活用面・留意点
- アブラナ科野菜の害虫には糖給餌によって寿命や産卵数等が増加する種も知られているので、実際にコナガコマユバチのために糖を給餌する場合には、寄生蜂だけが利用可能で害虫等が利用できない給餌方法を開発する必要がある。
- 生物農薬として利用をされているコマユバチ科の寄生蜂に対しても糖給餌は産卵能力の向上が期待できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:天敵の行動制御技術の実験的評価・改良
- 課題ID:03-08-03-*-07-04
- 予算区分:新事業創出
- 研究期間:2002~2006年度
- 研究担当者:光永貴之、矢野栄二、下田武志、鈴木芳人
- 発表論文等:1) Mitsunaga et al. (2004) Applied Entomology and Zoology 39: 691-697.