イネの玄米外観品質を決めるQTLとその温度反応

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要約

第8染色体を除く11対の染色体に玄米外観品質に関与するQTLがある。そのうち、第2染色体および第12染色体上のQTLは、それぞれハバタキ(インディカ)型で、白未熟粒および整粒を増加させる。これらのQTLは登熟期の気温に反応性を持つ。

  • キーワード:玄米外観品質、高温登熟、QTL
  • 担当:中央農研・北陸地域基盤研究部・稲機能開発研究室
  • 連絡先:電話025-526-8300、電子メールterao@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

近年、登熟期の高温により玄米の外観品質が低下することが問題となっている。そこで、品質低下の遺伝的要因を明らかにするために、ササニシキ/ハバタキ//2*ササニシキの戻し交配固定系統を用いて玄米外観品質に関与する計量形質遺伝子座(QTL)解析を、1999年から2003年までの5年間にわたって行い、関与QTLを見いだすとともに、年次間の気象条件の違いを利用して、そのQTLの登熟期の温度との関係を検証する。

成果の内容・特徴

  • 第8染色体を除く11対の染色体に玄米外観品質に関与するQTLがある。このうち、複数年で確認されたのは、第2,4,9,10染色体の白未熟粒、第1,4,6,9染色体の死米、第7,5,10染色体の着色粒、第7染色体の胴割米、第12染色体の整粒のQTLである(図1)。
  • 第2染色体上のQTLはハバタキ型で白未熟粒を増加させる。このQTLは、1999年から2002年までは安定して検出されたが、登熟期の気温が低い2003年にはQTLが検出されなかったことから、低い温度条件から品質低下が始まる、温度反応性のQTLである(図2)。
  • 第12染色体上のQTLはハバタキ型で整粒を増加させる。従ってこのQTLはジャポニカ型イネの玄米品質の改良に役立つものと期待される。このQTLは、登熟期の気温が最も高かった1999年には検出されなかったが、2000年から2003年までの4年間安定して検出された。従って、このQTLをハバタキ型で持つ系統も、高温による品質低下は免れないが、第2染色体上のQTLよりも高温まで整粒増加の効果があることが期待される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • これらのQTLを有効に利用するためには、ファインマッピングを行って、より近隣のマーカーをつくることが必要であり、現在一部のQTLについて進めている。
  • 第12染色体には出穂期のQTLがあり、品質のQTLに重なっているので、今後の解析に注意が必要である。

具体的データ

図1.玄米外観品質に関与するQTL

 

図2.第2 染色体の未熟粒のQTL 図3.第12 染色体の整粒のQTL

図2,3 共通

その他

  • 研究課題名:高温条件下の玄米品質に関与する遺伝的・環境的要因のQTL解析
  • 課題ID:03-12-02-02-10-04
  • 予算区分:気候温暖化
  • 研究期間:1999~2004年度
  • 研究担当者:寺尾富夫、千葉雅大、長田健二、廣瀬竜郎、松村 修