カバークロップによって休耕田、遊休水田を管理する

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要約

冬作のカバークロップとしてヘアリーベッチ、夏作のカバークロップとしてエンサイを水田に周年にわたり栽培することで周年畑管理条件では2年間、夏期湛水管理条件では3年間雑草の発生、繁茂を抑制でき、カバークロップ跡の水稲栽培にも支障がない。

  • キーワード:カバークロップ、休耕田、遊休水田、ヘアリーベッチ、エンサイ、水稲栽培
  • 担当:中央農研・耕地環境部・上席研究官、作付体系研究室
  • 連絡先:電話029-838-8532 電子メールyamahi@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

フ米の生産調整政策が開始されて久しいが、依然として耕作放棄水田や夏期に作物が栽培されない不作地の水田が発生しており、それら の省力的な管理法や保全対策が必要となっている。そこで、さまざまな事情により転作作物の作付けが困難な水田の荒廃を防ぐため、畑地で利用されているカ バークロップによる省力的な管理技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 冬作のカバークロップとしてヘアリーベッチ(Vicia villosa)、夏作のカバークロップとしてエンサイ(Ipomoea aquatica)を用いた。ヘアリーベッチは繁茂力が大で土壌面を被覆する時期が早く被覆期間も長期にわたり、窒素吸収量(1.4∼2.3kg/a)も多 く跡地への窒素富化が大きい。エンサイは耐湿性が強でヘアリーベッチ跡では無肥料でも旺盛に生育し雑草化の懸念はなく、降霜で枯死するため刈り取りの必要 はない(表1)。
  • エンサイは最も高い苗立歩合が得られるヘアリーベッチ開花終期(6月下∼7月上旬)の立毛中に播種する。さらに、立毛播種後にヘアリーベッチを刈り倒し敷き草にすると苗立歩合は向上する(図1)。
  • ヘアリーベッチ-エンサイ体系の導入により、周年畑管理条件では2年間、夏期湛水管理条件(6月下∼9月中旬、2.5か月間湛水、他の期間は畑管理)では3年間多年生雑草の侵入・発生が抑えられる(図2)。
  • ヘアリーベッチは2年目以降、自然落下種子による出芽(20∼125本/m²)があり新たに播種する必要はない。
  • 本体系跡の水稲は、連年水稲栽培跡の水稲と同等もしくはそれ以上の収量が得られる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • ヘアリーベッチの自然落下種子は水稲を1年間栽培した跡では8∼26本/m²、同2年間跡でもm²当たり数本発生するので輪換畑では雑草化する懸念がある。
  • ヘアリーベッチは0.5kg/a(畝間60cmの条播)、エンサイは0.2∼0.3kg/a(ヘアリーベッチ立毛中への散播)程度播種する。
  • エンサイの種子は高価である。

具体的データ

表1カバークロップとしての適性評価の結果

 

図1 ヘアリーベッチの開花始期~終期の立毛中に播種したエンサイの苗立歩合

 

図2 雑草発生量の推移

 

表2 カバークロップ跡の水稲収量(連年水田の収量を100とした比率)

 

その他

  • 研究課題名:水稲-水田カバークロップ体系を基軸とした水田の持続的利用技術の開発
  • 課題ID:03-05-01-01-10-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002∼2005年度
  • 研究担当者:山本泰由、田澤純子、臼木一英、三浦重典
  • 発表論文等:山本(2003)農及園78(1):30-34