モノリスライシメータ法のための不攪乱大型土壌コア採取装置

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要約

層位や構造を乱さない状態で、直径30 cm 深さ100 cmの土壌コアを採取できるトラクタ接続型のサンプリング装置を開発した。採取した土壌コアを地表面下に設置することにより、硝酸性窒素等の溶脱を圃場に近い環境条件で連続的に計測できる。

  • キーワード:硝酸性窒素、溶脱、モニタリング、プレファレンシャルフロー、キャピラリー
  • 担当:中央農研・土壌肥料部・水質保全研究室
  • 連絡先:電話029-838-8829、電子メールmun@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

土壌タイプが硝酸性窒素等の溶脱に及ぼす影響を明らかにするための試験研究には、作物が栽培可能な大きさの不攪乱土壌コアを用いる モノリスライシメータ法が有用である。本法は、粘質土壌のようにプレファレンシャルフロー(バイパス流などの不均一な土壌浸透水流の総称)が生じやすい土 壌では特に重要である。このため本研究では、層位や構造を乱さない状態で土壌コアを効率的に採取できる装置を開発する。また、採取土壌コアを用いて、硝酸 性窒素等の溶脱をモニタリングするための施設を試作する。

成果の内容・特徴

  • 土壌タイプが硝酸性窒素等の溶脱に与える影響を解明するため、層位や構造を乱さずに土壌を採取できる装置を開発した(図1、写真1)。本装置は、リフト部、二重管構造の回転動力部、押し込み・持ち上げの上下動力部からなり、土壌切り込み刃のついたドリル管の回転と上下動力部の押し込み圧を調整することで、圧密をかけずに直径30 cm深さ100 cmの不攪乱土壌コアを採取できる。
  • 本装置はトラクタの3点リンクに装着してPTOから動力を得る仕様であり、どのメーカーのトラクタでも取付け可能である。79馬力のトラクタ(写真1)に接続した場合、回転モーメントは30 rpmで最大4.6 kN m、押し込み荷重は最大34 kN、持ち上げ荷重は最大23 kNである。また、シリンダー格納時の高さは約240 cmであり、トラックで公道を搬送できる。
  • 作業には最低3人が必要で、100 cm長の土壌コアの採取には黒ボク土で約20分、赤色土で約90分、砂丘未熟土で約2分を要する。また、装置の取付等の準備に約60分が必要である。分割可能なサンプル管を用いることで、100cm以下の任意の長さの土壌コアを採取できる。
  • 土壌コア下端に土壌水が飽和するのを避けるため、土壌と砂利の境界にポリエチレン繊維等のキャピラリーを装着することで毛管排水を促す(図2)。また、土壌コアを通過した浸透水がスムーズに排出されるように、土壌下端を砂利で置き換え、パンチ板を加工した支持台を装着する(図2)。
  • 圃場に近い環境条件で窒素溶脱量を計測するため、地下モニタリング施設を試作した(図2)。本施設は、土壌コアを地表面下に収納するための有底塩ビ管と浸透水をサンプリングするための地下室から構成される。地下室に設置した20Lポリエチレン容器に浸透水を貯留することで水試料を連続的に効率よくサンプリングできる。

成果の活用面・留意点

  • 本法は透水性試験や土壌構造が作物生育に及ぼす影響の解明など各種試験に応用できる。
  • 採取コアを地表に引き上げる際に土壌の一部が落下する砂質土壌の場合は、コアを引き上げる前にコア下端にフタをする必要がある。
  • レキを含む土壌は本法の適用外である。

具体的データ

図1 不攪乱大型土壌コア採取装置の概略図

 

写真1 トラクタ3点リンクへの不攪乱大型土壌コア採取装置の接続

 

図2 モノリスライシメータ横断面及びコア底面の加工

 

その他

  • 研究課題名:土壌タイプ別の窒素溶脱リスクの評価と有機物管理
  • 課題ID:03-06-06-01-06-05
  • 予算区分:自然循環
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:前田守弘、太田 健、井原啓貴
  • 発表論文等:前田ら(2004):特許出願2004-291435号、前田・尾崎(2006)水環境保全のための農業環境モニタリングマニュアル(農業環境技術研究所編)印刷中