大規模米麦2毛作経営への飼料イネ導入の目安となる価格と収量
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要約
飼料イネが現行の生産費用を償い米麦2毛作経営に導入されるには、助成金が2万円に低下した場合、59.4円/乾物1kgの価格もしくは1,281kg/10aの乾物収量の実現が必要である。助成金がない場合では現行の生産費用を償うためには84.5円/kgの価格か1,885kg/10aの乾物収量の実現が必要である。
- キーワード:
飼料イネ、米麦2毛作経営、生産費、乾物収量、価格、助成金水準
- 担当:中央農研・経営計画部・耕種経営研究室
- 連絡先:電話029-838-8420、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:関東東海北陸農業・総合研究、経営 、共通基盤・総合研究
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
水稲の生産調整の一環として、また、自給粗飼料増産への対応として飼料イネの作付が行われている。現状は転作助成金の存在によって耕種農家でその作付けが可能となっているが、助成金は減額の方向にある。そこで、飼料イネの生産費をもとに、助成金水準が変化した場合に、米麦2毛作経営に飼料イネの導入が可能となる価格及び収量水準を試算計画法を用いて明らかにする。
成果の内容・特徴
- 米麦大規模経営の作付規模は、食用イネ10ha、飼料イネ7ha、冬作として小麦17haとした。経営面積のうち16haを借入地とした。耕種農家は播種から落水までを担当し、収穫調製作業は町内のコントラクタに委託するとした。現状では追肥は行われていないが、追肥による増収がみられるため、追肥をした場合の試算も行った。飼料イネの生産費用を表1に示した。
- 追肥なしの現栽培体系において、助成金水準1(現状の助成金6万円/10a)では生産費用を償うだけでなく収益があり、耕種農家に飼料イネが導入される。助成金水準3(助成金が2万円/10a)の場合では、現状の生産費用を償うには59.4円/乾物1kgの価格か、現状よりも486kg/10a多い1,281kg/10aの乾物収量が必要である。助成金がなしの場合では84.5円/乾物1kgの価格か、現状よりも約2.4倍の1,885kg/10aの乾物収量が必要である。また、技術開発目標の乾物収量1.5トンが達成された場合でも生産費用を償うには13,000円/10a程度の助成金か47.6円/乾物1kgの価格の実現が必要となる(表2)。
- 追肥ありの場合では、助成金水準2(産地づくり交付金2万円/10aと耕畜連携加算1.3万円/10a)でも収益はプラスになる。助成金が全くない場合に生産費用を償うには、73.2円/乾物1kgの価格か1,937kg/10aの乾物収量が必要である。また、乾物収量1.5トンが達成された場合でも生産費用を償いには14,500円程度の助成金か48.8円/乾物1kgの価格の実現が必要となる。(表3)
成果の活用面・留意点
- 米麦2毛作地帯での飼料イネ導入の目安となる。
- 収穫調製作業はコントラクタに委託した場合の結果である。
- 試算に用いたデータは、飼料イネの作付けが最大であり、土地利用率も200%と高い経営である。従ってこれより経営規模や飼料イネ作付面積が小さい場合や土地利用率が下がる場合は減価償却費が増加するため、必要となる収量や価格は上昇する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:耕種農家における飼料イネ導入の評価と定着条件の解明
- 課題ID:03-03-01-*-09-05
- 予算区分:交付金プロ「関東飼料イネ」
- 研究期間:2004年∼2005年(∼2008年)
- 研究担当者:関野幸二、松本浩一、山本淳子、畑原昌明(埼玉農総研)