小明渠作溝同時浅耕播種と耐倒伏性品種を基軸としたダイズの浅耕栽培法

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要約

小明渠作溝同時浅耕播種機によるコムギ跡ダイズの1工程播種と耐倒伏性ダイズ品種との組み合わせによって、大幅な作業効率の向上と燃料消費の節減が図られるとともに、7月上∼中旬播種でも狭畦、無中耕無培土条件での安定栽培と雑草抑制が可能となる。

  • キーワード:ダイズ、小明渠作溝同時浅耕播種、耐倒伏性品種、雑草防除、省力化
  • 担当:中央農研・関東東海総合研究部・東海大豆研究チーム
  • 連絡先:電話059-268-4610、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・総合研究、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

東海地域ではコムギ跡ダイズの播種時期が梅雨と重なることから、作業が降雨の影響を受けにくく湿害を軽減できる耕起播種技術が求め られている。また、ダイズ生産規模の拡大に伴う省力化や作業競合の回避の手段として狭畦、無中耕無培土技術への強い指向性があるものの、現行の基幹品種の フクユタカでは倒伏を招き失敗する例が多い。そこで、小明渠作溝同時浅耕播種と耐倒伏性品種を基軸とした省力的で気象条件の影響を受けにくい栽培法を開発 する。

成果の内容・特徴

  • 小明渠作溝同時浅耕播種機は2m前後の間隔の小明渠作溝と浅耕播種の同時作業が可能であり、多雨条件での湿害軽減効果が高い(平成16年度主要研究成果)が、少雨条件でも0.6-0.8m/sの作業速度で5cm、1.0m/sの作業速度で7cm程度の耕深を確保することで安定した出芽が得られる(図1)。
  • 小明渠作溝同時浅耕播種機には大型トラクタ用(ロータリ耕うん幅2.4m、適応馬力65-95PS)と中型トラクタ用(ロータリ耕うん幅1.8m、適応馬力35-50PS)の2タイプがある。作業幅と作業能率は、大型トラクタ用が2.6m、0.28h/10a、中型トラクタ用が2.0m、0.33h/10aであり、荒起しと耕起播種の2工程からなる慣行の耕起播種作業に比べ作業時間と燃料消費がそれぞれ50%程度節減される(データ略)。
  • 早生ダイズ系統九州136号は7月下旬の晩播ではやや倒伏しやすいが、7月上∼中旬播種では浅耕、狭畦(畦幅45cm)、無中耕無培土条件で栽培してもほとんど倒伏せず、フクユタカと同等な坪刈り収量を示す。フクユタカは、これらの栽培条件では播種期にかかわらず著しく倒伏し、減収や収穫ロスを生じる危険性が大きい(図2)。九州136号はフクユタカに比べ7∼10日程度成熟期が早く、作期分散が可能である。
  • 小明渠作溝同時浅耕播種と狭畦の組み合わせでは土壌表層が乾燥しやすく、雑草発生本数は減少する(図3)。また、狭畦化による早期被覆と相まって高い抑草効果を示し、土壌処理や生育期茎葉処理のみでも体系処理(土壌処理+生育期茎葉処理)と同等の防除効果が得られる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 2年3作体系のコムギ跡ダイズの栽培法として導入できるが、九州136号栽培跡ではコムギの適期播種も可能である。
  • 東海地域の基幹品種フクユタカで広畦、中耕培土が必須とされる播種期(7月上∼中旬)でも、九州136号では狭畦、無中耕無培土条件での安定した栽培が可能である。
  • 九州136号は2005年度中に品種登録される予定であるが、東海3県では奨励品種として当面採用の予定はない。

具体的データ

図1 作業速度と耕深がダイズの出芽に及ぼす影響

 

図2 小明渠浅耕栽培条件での九州136号とフクユタカの倒伏と収量

 

図3 耕起播種法とダイズ畦幅が雑草発生(播種22日後)に及ぼす影響

 

図4 雑草防除体系とダイズ畦幅が収穫期における残存雑草量に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:麦・大豆の広畦・浅耕栽培を基軸とした大豆の新栽培体系の開発
  • 課題ID:03-01-01-01-24-05
  • 予算区分:ブラニチ2系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:松尾和之・渡辺輝夫・増田欣也・中西幸峰(三重県科振セ)
  • 発表論文等:なし