メタン消化液中の速効性窒素成分は0.5M塩酸抽出で測定できる
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要約
メタン消化液中の速効性窒素成分量は0.5M塩酸抽出アンモニア態窒素が目安になり、メタン消化液は短期の野菜作に速効性のアンモニア系窒素肥料として利用可能である。
- キーワード:メタン消化液、硝化、リン酸アンモニウムマグネシウム、家畜ふん尿
- 担当:中央農研・土壌肥料部・資材利用研究室
- 連絡先:電話029-838-8826、電子メールgen@affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・土壌肥料、畜産草地、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
近年、バイオマス利用の観点等から家畜ふん尿処理の方法としてメタン発酵が注目され、メタン発酵プラントが増えている。しかしなが
ら、一部の地域を除き発酵残さであるメタン消化液は下水処理されている。メタン消化液には肥料成分が含まれるため、畑地へ肥料として還元出来ると考えられ
る。利用するにあたって肥料成分の変動に関する情報及び簡易な窒素肥料成分の測定方法が必要であると考え、国内で一般的と考えられる牛ふん尿を主体とした
2プラントより1年間・毎月提供を受けた試料を用いて特性を明らかにした。
成果の内容・特徴
- メタン消化液中の窒素はアンモニア態窒素が過半を占め、0.5M塩酸抽出(1:100)アンモニア態窒素は水で希釈測定した場合の約1.2倍量である(表1)。これは塩酸によりリン酸アンモニウムマグネシウム(MAP)等、酸で溶解する無機成分が溶解し抽出されたためと考えられる。
- メタン消化液は硝化を抑制せず、土壌に添加・培養した場合、アンモニア態窒素の硝化は硫酸アンモニウムとほぼ同じ速度で進む(図1)。
- 一般に堆肥を土壌に添加し培養すると有機物が分解し無機態窒素が増加するが、メタン消化液を添加・培養した場合、増加後の無機態窒素量は0.5M塩酸で抽出されるアンモニア態窒素とほぼ同量であった(図2)。土壌が酸性ならばMAPは溶解するため、増分はMAP等の無機成分の可溶化によるもので、メタン消化液中の有機物からの窒素無機化は6週間程度の期間ではあまり多くないと考えられる。
- メタン消化液施用量を0.5M塩酸抽出アンモニア態窒素量を元に決めコマツナのポット栽培を行ったところ、生育量、窒素吸収量ともに硫酸アンモニウム施用の場合とほぼ同等であり(表2)、栽培期間中に生育阻害は見られなかった。従って、メタン消化液は短期の野菜作に速効性のアンモニア肥料として利用可能であり、速効性の窒素成分量は0.5M塩酸で抽出されるアンモニア態窒素が目安になる。
- なお、通常メタン発酵においては発酵液の流動性を確保するために固形分は6∼8%に押さえられており、発酵後に固形分は半減するが成分組成に与える影響は小さく、メタン消化液に含まれる窒素、リン、カリウムの濃度は原料とほぼ同じである。また、含有量の多いカリウム及び0.5M塩酸抽出アンモニア態窒素の成分変動は小さいため、原料に大きな変化が無い限り肥料成分含有量は安定している(表1)。
成果の活用面・留意点
- メタン消化液を窒素肥料として畑地に利用する際の基礎的な情報となる。
- 牛ふん尿を主原料とする原料の固液分離をしていない湿式の高温発酵プラント2カ所の試料についての分析結果である。
- 0.5M塩酸抽出アンモニア態窒素の一部は固相に存在すると考えられるため、散布時に固形分が集中するとそこだけ窒素過多になる可能性があるので、注意が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:メタン消化液の土壌施用後の肥効発現および野菜作への影響の解明
- 課題ID:03-06-04-*-05-04
- 予算区分:バイオリサイクル
- 研究期間:2002∼2004年度
- 研究担当者:石岡 厳、木村 武