合成性フェロモントラップによるアカヒゲホソミドリカスミカメの発生消長の把握

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要約

アカヒゲホソミドリカスミカメ合成性フェロモン剤を誘引源としたトラップによる雄の誘殺消長は、設置場所の成虫の発生消長を反映している。トラップとしては、水盤トラップと粘着トラップで誘殺雄数に差がなく、草冠高に設置すると捕獲効率が高い。

  • キーワード:アカヒゲホソミドリカスミカメ、性フェロモン、トラップ、誘殺消長、発生消長
  • 担当:中央農研・北陸水田利用部・虫害研究室
  • 連絡先:電話025-526-3243、電子メールhhiroya@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・病害虫(虫害)、関東東海北陸農業・北陸・生産環境
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

アカヒゲホソミドリカスミカメは、雌が雄を誘引し、雄を誘引する性フェロモン成分も明らかにされている。また、合成性フェロモンの 量とその誘引性、誘引性の持続期間についても明らかにされ、本種の発生消長の把握に合成性フェロモン剤を誘引源としたトラップが利用できる可能性が高い。 そこで、合成性フェロモン剤を誘引源としたトラップの種類と設置高による捕獲効率を検討する。さらに、農道と水田内にトラップを設置し、トラップの誘殺消 長とトラップを設置した場所周辺の本種の発生消長を調べ、トラップの発生消長把握における有効性を評価する。

成果の内容・特徴

  • 合成性フェロモン剤を誘引源とした水盤トラップと粘着トラップの誘殺雄数は同程度である(図1)。
  • トラップの誘殺雄数は、設置する高さにより変動し、草冠高あるいはこれよりやや低い高さで多い(図2)。
  • イネ科雑草の繁茂した農道(2×48m)の中央部に設置したトラップの誘殺雄数の推移は、すくい取り成虫数の推移を反映している(図3)。
  • 水田(12×25m)中央部、イネの草冠高に設置したトラップの誘殺雄数の推移は、すくい取りでの成虫数の推移を反映している(図4)。
  • トラップの誘殺消長は、トラップ設置場所の成虫の発生状況を反映しており、成虫の発生消長の把握に有効である。

成果の活用面・留意点

  • 合成性フェロモン剤は、n-hexyl n-hexanoate、(E)-2-hexenyl n-hexanoate、n-octyl n-butyrateを100:40:3の比率で混合し、0.01mgをゴムキャップに含浸させたものを用いる。
  • 水盤トラップは、直径45cm、深さ14.5cmで水色のものを使用し、合成性フェロモン剤は水面上約10cmの高さに吊り下げる。粘着トラップは、白色の粘着板(24×30cm)2枚を背中合わせにして垂直に設置し、粘着板上辺中央部に合成性フェロモン剤を設置する。
  • トラップは草冠高の変化に応じて、5∼10日程度の間隔で高さを調整する。

具体的データ

図1 水盤トラップと粘着トラップの誘殺雄数

 

図2 粘着トラップの設置高の違いと誘殺雄数

 

図3 農道におけるすくい取り成虫数とフェロモントラップの誘殺雄数の推移

 

図4 水田内におけるすくい取り成虫数とフェロモントラップの誘殺雄数の推移

 

その他

  • 研究課題名:合成性フェロモン利用による斑点米カメムシ防除技術の開発
  • 課題ID:03-11-03-01-10-05
  • 予算区分:アグリバイオ
  • 研究期間:2004∼2006年度
  • 研究担当者:樋口博也、高橋明彦、福本毅彦(信越化学)、望月文昭(信越化学)、石本万寿広(新潟農総研)、佐藤秀明(新潟農総研)、村岡裕一(富山農試)、青木由美(富山農試)、滝田雅美(山形農総研)、野口忠久(長野農事試)
  • 発表論文等:樋口ら(2004) 応動昆48:345-347、滝田(2005)、北日本病虫研報56:108-110、石本(2005) 北陸病虫研報54:13-17