ダイズ品種サチユタカにおける種皮ミネラル成分としわ粒発生との関係
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要約
サチユタカの種皮では、フクユタカ、タチナガハに比べカルシウム含有量が低くカリウム含有量が高い。サチユタカの種皮に含まれるカリウムは結合強度の低い状態で存在することから、降雨や結露などによるカリウム溶脱がしわ粒の発生に関与する可能性がある。
- キーワード:大豆、しわ粒、収穫遅延、カリウム
- 担当:中央農研・関東東海総合研究部・東海大豆研究チーム
- 連絡先:電話059-268-4610、電子メールkinya@affrc.go.jp
- 区分:関東東海北陸農業・総合研究、共通基盤・総合研究
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
ダイズ種皮のしわと裂皮は外観品質や加工上問題になる障害であり、種皮細胞壁の健全な発達に必要な養分の不足、収穫遅延などが原因
とされているが不明な点も多い。ダイズ品種サチユタカは大粒白目を特徴とする短茎早生品種であり、東海地域でも基幹品種フクユタカとの作業分散を図る上で
有望視されたが、しわ粒が多発するなどの問題があり実用化には至っていない。そこで、サチユタカのしわ粒発生の原因を明らかにするため種皮のミネラル成分
について品種や収穫遅延との関係を検討した。
成果の内容・特徴
- サチユタカ子実の子葉と種皮では、フクユタカやタチナガハに比べカルシウム含有量が低く、カリウム含有量が高いという特徴を示す(図1)。
- 時期を変えて収穫したサチユタカでは、収穫時期が遅れるほどしわ粒が増加し、種皮に含まれるカリウムのうち水で抽出可能な画分の減少が見られる(図2)。サチユタカで収穫遅れにともなって増加するしわは、亀甲しわと呼ばれる種類であった。
- 立毛条件での降雨の影響を想定し、健全種子に対して湿潤処理と乾燥処理とを繰り返すとしわ粒の増加が見られるが、サチユタカではフクユタカやオオツルに比べしわ粒の増加程度が大きい(図3)。なお、サチユタカとオオツルの種皮中のカルシウムとカリウム含有量はほぼ同じ値を示す。
- キレート溶液(EDTA・2Na溶液、0∼1.0mM/L)を用いて種皮からのミネラル成分の溶出の難易をサチユタカとオオツルで比較したところ、カルシウムやマグネシウムの溶出の差は小さいものの、カリウムの溶出量はすべての溶液濃度でサチユタカがオオツルを上回る値を示す(図4)。
- 以上の結果から、サチユタカの種皮はカリウム含量が高く、しかも含まれるカリウムは結合強度の低い状態にあることから、降雨や結露などによって溶脱し、しわ粒の発生につながることが示唆される。
成果の活用面・留意点
- カリウム溶出の難易により、ダイズ品種のしわ粒発生の危険性を評価できる可能性がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:しわ粒・裂皮粒の発生要因の解明と制御技術の開発
- 課題ID:03-01-01-01-25-05
- 予算区分:ブラニチ2系
- 研究期間:2002∼2005年度
- 研究担当者:増田欣也、松尾和之、渡辺輝夫