イネの小規模栽培実験での被覆資材による交雑防止法

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要約

イネの小規模隔離栽培実験では風を止め、花粉を通過させない被覆資材で栽培区画を覆うことによって実験品種の花粉による周辺での交雑を防止することができる。

  • キーワード:イネ、交雑防止、被覆資材
  • 担当:中央農研・北陸地域基盤研究部・専門領域研究官
  • 連絡先:電話025-526-8304、電子メール yatou@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・生物工学、北陸・水田畑作物、作物・生物工学
  • 分類: 科学・参考

背景・ねらい

近年、国内で栽培されるイネ品種は多様化の傾向にあり、遺伝子組換えイネを始めとして医療目的の品種、耐病性IL品種、着色米品種等、品種開発の過程でも他品種との自然交雑に注意が必要な品種が増えている。
これまで栽培距離、栽培場所、栽培時期、袋掛け等によって隔離を行っているが、さらに今後の様々な状況の栽培実験に対応するためにこれらの施策に加えて被覆資材による交雑防止法の開発が必要である。

成果の内容・特徴

  • 一般にイネが隣接個体から受粉して交雑する確率は概ね0.0∼1.0%の範囲にある。このイネの交雑は開花中の風の影響を大きく受け、卓越風の風上側個体から受粉する確率が最も高い(図1A,B)。
  • 栽培区画の上面と4側面を被覆した場合に被覆内をほぼ無風にする農業用不織布資材がある(表1)。
  • 風を通過させにくい資材ほど花粉を通過させにくく、花粉の自然落下条件で花粉を通過させない不織布資材がある(表2)。
  • このような資材を使い、農業用パイプハウスなど用いて研究用イネの栽培区画を交雑防止の目的で完全に覆うことができる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 農業用パイプハウス等で覆うことのできる程度の小規模栽培実験での花粉飛散防止技術として利用できる。
  • 日射によって被覆内部の温度が上昇し条件によっては一時的に40°Cを超えることもあるので、必要に応じて温度上昇を防止する措置をとることとする。

具体的データ

図1A. 開花中の風向風速(2002年)

 

図1B.中央の1本の花粉親個体の周囲に隣接(18~30cm)する,各個体の交雑率(%)(2002年)

 

表1.被覆内外の風速の比較

 

表2.被覆資材の花粉の透過

 

図2.農業用パイプハウスを利用した栽培実験区画の被覆状況

 

その他

  • 研究課題名:被覆資材による花粉飛散防止効果に関する調査研究(イネ)
  • 課題ID:03-12-05-*-10-05
  • 予算区分:安全性確保
  • 研究期間:2002∼2005年度
  • 研究担当者:矢頭 治、横山宏太郎、川田元滋、吉田 均、田淵宏朗、青木秀之、平八重一之、芦澤武人、大槻 寛、日比忠晴、提箸祥幸
  • 発表論文等:矢頭・青木(2005) 北陸作物学会報40:15-19