ジベレリン生合成経路に関わるOsGA20ox1はイネの草丈制御に関与する
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要約
イネの草丈が約2倍に伸長する変異体の原因遺伝子はGA(ジベレリン)生合成に関与するOsGA20ox1の発現量を増減させた組換え体において草丈は顕著に影響を受ける。
- キーワード:イネ、OsGA20ox1、草丈、組換え体、GA(ジベレリン)生合成
- 担当:中央農研・北陸地域基盤研究部・稲組換研究チーム
- 連絡先:電話025-526-8319、電子メールkawata@affrc.go.jp
- 区分:関東東海北陸農業・生物工学、作物・生物工学
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
イネの草丈は育種上重要な形質の一つである。イネのGA生合成系酵素遺伝子群のうちGA20位酸化酵素遺伝子はGA生合成経路の主要酵素をコードし、OsGA20ox1、2、3 および4 が知られている。半矮性を示すOsGA20ox2 の遺伝子機能欠損変異体は、品種IR8の開発に利用されてきた経緯がある。しかしOsGA20ox2 以外のGA20位酸化酵素遺伝子についての解析はすすんでいない。本成果情報では、作出したイネ組換え体の中から見出された、未知の変異によって草丈が伸長した個体の分子遺伝学的解析を通して、この変異の原因遺伝子として特定されたOsGA20ox1 に関わるイネ草丈制御機構を明らかにし、その農業的利用の可能性を探ることを目的とする。
成果の内容・特徴
- イネ変異体(B142)は挿入DNA配列を有する組換え体であり、原品種(どんとこい)と比較して草丈が約2倍に伸長する(図1)。
- 自殖後代での解析の結果、挿入DNA配列の存在と草丈伸長は連鎖しており、また既知のイネ徒長型突然変異体slr1と比較して幼苗期の徒長程度が穏やかである。
- 挿入配列の染色体上の位置はイネ3番染色体上のOsGA20ox1上流域で、OsGA20ox1の発現量が上昇する(図2)。
- GA生合成系阻害剤のウニコナゾールの添加により草丈伸長が抑制される。また内在性GAの定量の結果、活性型GAが増加している(表1)。これらの結果は当該変異体の草丈伸長特性がGA生合成系に関わることを示す。
- OsGA20ox1 もまた既知の草丈関連遺伝子OsGA20ox2と同様にイネの草丈伸長に関与する遺伝子であると考えられる。
- OsGA20ox1の過剰発現させた組換え体では草丈が伸長し、RNAiにより発現を抑制させた組換え体では草丈が短くなる(図3)。これらの結果は、OsGA20ox1 の発現レベルを調節することにより、イネの草丈が調節可能であることを示す。
成果の活用面・留意点
- 草丈関連遺伝子として新たに明らかとなったOsGA20ox1は、イネのバイオマス利用適性を向上させた組換えイネ系統の開発等に応用できる可能性がある。
- イネの草丈制御に関わるOsGA20ox群の包括的な理解のためには、現在のところ機能未知のOsGA20ox3及び4 の機能解明をすすめるとともに、OsGA20ox群の相互作用の解析を行う必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:実用的な組換えイネ系統作出のための有用な遺伝子探索と遺伝子導入法の開発
- 課題ID:03-12-03-01-02-05
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001∼2005年度
- 研究担当者:川田元滋、吉田 均、及川鉄男、腰岡政二(花き研)、児島清秀(新潟大学)
- 発表論文等:T. Oikawa et al. (2004) Plant Mol. Biol. 55:687-700.