ダイズ紫斑病菌のチオファネートメチル剤耐性株の分布実態と遺伝的類縁性
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要約
チオファネートメチル剤耐性ダイズ紫斑病菌は、我が国に広く(調査15県中13県)分布している。本剤耐性を示す分離株間の遺伝的な類縁性は高く、β-チューブリン遺伝子の第198コドンに置換が起こっていると推定される。
- キーワード:ダイズ紫斑病菌、チオファネートメチル剤耐性、AFLP分析、遺伝的類縁性
- 担当:中央農研・病害防除部・糸状菌病害研究室
- 連絡先:電話029-838-8940、電子メールiiori@affrc.go.jp
- 区分:通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
ダイズ紫斑病は、ダイズの葉や茎、種子などに斑点を引き起こす。本病の防除には、おもにチオファネートメチル剤(TM)が使用され
なかった。そこで、本研究では、TM耐性ダイズ紫斑病菌による被害を軽減化する基礎的知見として、その分布の実態と遺伝的な類縁性を調べる。
成果の内容・特徴
- 15県から採取したダイズ罹病種子より分離したダイズ紫斑病菌247株のうち、13県からの154株はTM耐性であることから、TM耐性菌は日本各地に広く分布している(表1)。
- これら247株の遺伝子型をAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)によって分析すると、類縁性の違いが明瞭な4つの遺伝子型グループ(I∼IV)に類別され(表1)、すべてのTM耐性株はグループIに属する。グループIは71の遺伝子型に分けられ、そのうちの38の遺伝子型にTM耐性株が含まれる(図1)。
- ダイズ紫斑病菌のTM耐性株から無作為に抽出した12株の?-チューブリン遺伝子の第198コドンには、これまで他の菌類の本剤耐性株で報告されているグルタミン酸からアラニンへの置換が認められ(図2)、他の本菌耐性株でも同様なコドン置換が起こっていると推定される。
成果の活用面・留意点
- 耐性菌のまん延過程の遮断、防除薬剤の選択など、防除体系の策定の基礎的知見となる。
- 当面の耐性菌対策としては、TMの防除効果の低下に注意を払い、すでにTMの効果低下や耐性菌の出現が確認された地域ではTMからアゾキシストロビン剤やイミベンコナゾール剤に切り替える必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:薬剤耐性ダイズ紫斑病菌の個体群構造の解析
- 課題ID:03-07-01-*-15-05
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2003∼2005年度
- 研究担当者:今﨑伊織、小泉信三、安田伸子、川上 顕
- 発表論文等:Imazaki et al. (2006) J. Gen. Plant Pathol. 72(2): 77-84