家畜ふん堆肥による化学肥料代替は葉菜類のカドミウム濃度を低減する

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要約

家畜ふん堆肥等による化学肥料代替率を高め、それに応じて化学肥料の施用量を削減する管理を続けると、土壌へのカドミウム(Cd)の投入量が抑制されるとともに、土壌中の可給態Cdが低濃度になり、葉菜類可食部のCd濃度は低減する。

  • キーワード:家畜ふん堆肥、化学肥料代替、カドミウム、ハクサイ、レタス
  • 担当:中央農研・土壌肥料部・資材利用研究室
  • 連絡先:電話029-838-8826、電子メールkimurat@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

野菜のカドミウム(Cd)濃度は、コーデックス委員会において国際的な基準が決定され、安全・安心な農産物の確保の視点からも関心 が高い。農地へのCdの負荷源のひとつにリン酸質肥料が挙げられるが、家畜ふん堆肥も各種重金属を含む。そこで、茨城県農業総合センターが実施している有 機質資材と化学肥料の連用9年目の試験における土壌及び作物体試料を分析し、牛ふん堆肥や乾燥豚ぷんによる化学肥料代替の継続がCdの土壌蓄積及び野菜へ の可給性に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 化学肥料単独の連用に対し、牛ふん堆肥や乾燥豚ぷん(以下、家畜ふん堆肥等)による化学肥料の代替率が高いほど、葉菜類(レタス及びハクサイ)のCd濃度が低い。また、化学肥料に豚ぷんを上乗せ施用しても化学肥料単独よりCd濃度が低い(図1)。
  • リン酸成分当たりのCd含量は、家畜ふん堆肥等の方が過リン酸石灰等の化学肥料より低い場合が多いため、家畜ふん堆肥等による化学肥料代替は、Cdの総投入量や土壌蓄積量の減少をもたらし(表1)、長期的なCdリスクの低減からみて優位性がある。
  • 家畜ふん堆肥等による化学肥料代替率が高いほど、化学肥料連用に比べて作土のpHが高く維持され、0.01M及び0.1M塩酸可溶性Cd濃度が低い(表2)。
  • 家畜ふん堆肥等による化学肥料代替率が高いと、土壌中では可給性の高い交換性画分(pH7の1M酢安抽出画分)のCd濃度が低下する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 家畜ふん堆肥の肥料成分を勘案して化学肥料を削減する施肥管理が、窒素・リン投入量の抑制とともに、土壌へのCd投入量や野菜のCd濃度の低減にも寄与することを示す知見であり、環境保全に配慮した堆肥の適正利用の優位性を示す科学的根拠となる。
  • リン酸質肥料の種類によりCd濃度は異なり、家畜ふん堆肥等のCd濃度が高いものでは、化学肥料代替率が低い方がCd投入量が少なくなる場合がある。
  • 家畜ふん堆肥等を施用すると、銅(Cu)は有機態画分として、亜鉛(Zn)は主に酸化物吸蔵態画分として土壌に蓄積するが、レタス及びハクサイ可食部におけるCu及びZn濃度や生育への悪影響は認められていない。

具体的データ

図1 家畜ふん堆肥等の連用試験における化学肥料代替と作物体のCd濃度

 

表1 家畜ふん堆肥等における肥料成分、重金属の積算投入量と積算投入量と土壌中濃度の変化および野菜の収量

 

図2 作土中の形態別Cd濃度

 

表2 土壌のpHと各抽出法によるCd濃度

 

その他

  • 研究課題名:有機質資材施用における微量元素等の土壌中動態と野菜による吸収特性の解明
  • 課題ID:03-06-04-*-08-05
  • 予算区分:ブラニチ6系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:木村 武、佐野健人(茨城農総セ)、石岡 厳