麦作雑草カラスムギ種子は不耕起で越夏すると出芽が早まり、死滅も多い

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要約

カラスムギ種子は地表面で越夏すると、耕起によって土中に埋土された場合よりも出芽時期が1~2ヶ月早まるとともに斉一化する。地表面の種子も死滅が多いため、出芽総数も減少する。

  • キーワード:カラスムギ、出芽挙動、シードバンク、不耕起
  • 担当:中央農研・雑草バイオタイプ・総合防除研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8426、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・作付体系・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

カラスムギは既存の除草剤のみでは麦作中での防除が困難であるため,温暖地以西の固定転換畑を中心に近年その被害報告が増加している。除草剤以外の手段を統合した総合的防除体系を構築するため、耕種条件がカラスムギの出芽挙動と種子動態に及ぼす影響を解明する。

成果の内容・特徴

  • 地表面に脱落した当年産カラスムギ種子は耕起で土中に埋土されると2年間断続的に出芽のピークが存在するが、不耕起のまま地表面で越夏すると、出芽時期が1~2ヶ月早まり、冬期および2年目以降の出芽、2年後の未発芽生存種子もほとんどない(図1)。
  • カラスムギ種子は地表面に存在する期間が長いほど出芽時期が早まり、麦類播種期(11月中旬)以降の冬期の出芽数、翌春の土中の未発芽生存種子ともに減少する(図2)。
  • 地表面で越夏したカラスムギ種子は土中で越夏した種子よりも高温で発芽しやすくなる(図3)。このことが不耕起条件で出芽時期が早まる原因である。
  • 防虫網で覆った条件では地表面種子の出芽数は減少せず、未発芽生存種子数も多い(図4)。麦わらで地表面が覆われた場合、その量に応じて出芽数と未発芽生存種子数が増加する。
  • 麦類播種期以前に出芽したカラスムギは非選択性除草剤ならびに耕起作業で容易に防除できるため、夏秋期の不耕起期間を延長して出芽時期を早めることはカラスムギ防除に有効である。

成果の活用面・留意点

  • 麦跡不耕起大豆栽培など、夏期不耕起を導入したカラスムギの総合的防除の素材となる。
  • 茨城県産の1集団を用い、黒ボク畑土壌による試験で得られた結果である。
  • 地表面の種子の死滅の主因は金網と防虫網による排除試験(図4)の結果から、節足動物による摂食と推定される。
  • 実測した出芽率およびシードバンクの残存率はカラスムギの個体群動態のパラメータとして活用できる。

具体的データ

図1. 地表面および土中に播種したカラスムギ当年産種子の出芽パターン。

図2. 夏秋期の不耕起期間とカラスムギの時期別出芽数()内は不耕起日数。図4. 異なる地表条件におけるカラスムギ種子の運命

図3.地表面および土中深度5cmにおかれたカラスムギ種子の発芽反応の違い

その他

  • 研究課題名:難防除雑草バイオタイプのまん延機構の解明及び総合防除技術の開発
  • 課題ID:214b
  • 予算区分:21世紀1系(2001~2002)、ブラニチ1系(2003~2005)、基盤研究(2006)
  • 研究期間:2001~2006年度
  • 研究担当者:浅井元朗、澁谷知子、與語靖洋(農環研)
  • 発表論文等:浅井元朗(2007)麦畑に侵入するカラスムギ- 出芽の不斉一性という生き残り戦略.
                      種生物学研究30 71-94