マルチバンド空撮画像の輝度補正法
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要約
撮影画角が大きい航空機リモートセンシングで、撮影対象と太陽、センサー上の結像部位の相対的角度関係に対応して生じる大きな輝度むらを、水稲栽培圃場を校正に利用して補正する方法である。
- キーワード:画角、航空機リモセン、空撮画像、結像位置、輝度、補正
- 担当:中央農研・農業気象災害研究チーム
- 連絡先:電話029-838-8418、電子メールnarc_seika@affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・農業気象
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
航空機リモセンが、画像撮影の確実性とコストの低さから注目されている。しかしながら、衛星リモセンと比較すると、高度に対する撮像画像の幅が広く、撮影画角も極めて大きい。また、マルチバンド撮影では、センサー配置の都合上、直下だけでなく、前方あるいは後方の画像も撮影される。そのため、地表面からの反射光は正反射となったり、逆反射となったりして、撮影時の飛行方向と画角によって地表被覆の反射特性が大きく異なる。その結果、撮影された画像は飛行方向で画像の平均的な輝度に差がでるだけでなく、画角に応じた大きな輝度むらが生じて、利用技術の開発に大きな支障を来している。そこで、航空機リモセンで常用されるマルチバンド画像撮像装置「マルチラインセンサシステム ADS40」(近赤外部は後方2.0度、可視部は前方16.1度で撮影)を対象に、撮影対象と太陽、センサー上の結像部位の相対的角度関係に起因して生じる画像間の平均的な輝度の差と画角に応じた輝度むらを補正する方法を開発することを目的とする。
成果の内容・特徴
- 撮影対象と太陽、センサー上の結像部位の相対的角度関係に対応して生じる画像間の平均的な輝度の差と画角に応じた輝度むらの補正は、水稲栽培圃場の輝度は多数の圃場の平均値をとれば一定になることを利用して行う。
- 出穂期直前に撮影した水稲栽培圃場の画像の輝度を撮影バンド毎に調べると、輝度は飛行方向と画角で大きく変わる。この影響は撮影日で異なり、多数の圃場の平均輝度を同一にするには、輝度を画角によって0.6~1.8倍する必要がある場合も存在する。
- 開発した補正法を図1に示す。本法では、対象地域から水田圃場だけを抽出して、それら圃場の輝度の平均値をまず算定する。そして、バンド毎に修正の目標値を定め、画像毎に目標値に修正するのに必要な画角に応じた修正倍率を決定して、飛行方向に直角の方向の修正を行う。その後、圃場の輝度の差は局所的で、太陽光の分布は比較的広域的であるとの想定に基づいて太陽光のむらの影響を補正する。
- 本補正法を用いると、飛行方向や画角に依存する反射特性の差に起因する輝度の変化を補正して、水稲作付け圃場の可視部や近赤外部の輝度の分散を減少させられる。また、撮影バンド毎の画像を図2のように円滑にモザイク化することが可能である。これらの結果、植生指数画像の画像も円滑にモザイク化することが可能である。
成果の活用面・留意点
- 補正することで、画像解析時に土地利用等の判別精度が向上するだけでなく、非破壊成分分析の推定精度が向上する。
- 本法は、広域に広く分布する水稲栽培圃場を校正に利用するために、反射特性が水稲と大きく異なる水面や傾斜方位の異なる山地などの輝度の補正は十分ではない。
- 本来太陽等との相対的な角度関係に注目すべき反射特性の補正を地表面の位置に対応させているために、航空機の姿勢が変動する場合は補正誤差が大きくなる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:栽培適地適作期判定支援システムの開発
- 課題ID:215-c
- 予算区分:委託プロ(高度化事業)、基盤研究費
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:大原源二(中央農研)、黒瀬義孝、吉田智一、高橋英博(近中四農研)、
須藤健一(兵庫県農技センター)
- 発表論文等:大原、2005、リモートセンシング技術を活用する水稲生産調整現地確認簡略化法の開発、
近中四農研センター、122-138、大原・黒瀬、2007、
農業リモートセンシングハンドブック(システム農学会)、III14-16