農薬使用の環境リスクと経済性の両方を考慮した技術評価手法
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要約
農薬使用の環境リスク指標と経済性指標を同時に計算する手順である。環境負荷低減型技術の評価、環境に配慮した生産をする場合の農薬・作型・技術の選択に利用できる。
- キーワード:農薬、環境リスク、農薬使用農地危険度、農薬使用技術危険度、技術評価
- 担当:中央農研・生産支援システム研究チーム
- 連絡先:電話029-838-8975、電子メールmasaei@affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・情報研究
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
農薬使用の環境負荷に配慮する農業技術開発や農業生産が期待されている。そこで、農業技術について農薬使用の環境リスク指標と経済性指標を同時に計算できる方法を開発する。
成果の内容・特徴
- 本手法は、農業技術体系データベース(2005年度成果情報)および農薬ナビ(2005年度成果情報)を組み合わせて、農薬使用の環境リスク指標と経済性指標の両方を同時に算出する計算手順である(図1)。経済性指標は、農業技術体系データベースを用いて計算する。粗利益や所得等の収益性、変動費や原価などの費用、労働時間等の多様な指標が利用できる。
- 環境リスク指標としては、「農薬使用の技術危険度」を定義した。これは、対象とする技術で使用する全ての農薬有効成分の「農薬の使用農地危険度」を合計した値である。この計算では、農薬有効成分の使用密度と「環境管理参考濃度」を利用し、次式で表される。
農薬使用の技術危険度(mm)=Σ(各農薬有効成分の「農薬の使用農地危険度」(mm))。
農薬の使用農地危険度(mm)=有効成分の使用密度(kg/km2)÷環境管理参考濃度(mg/L)。
ここで、農薬有効成分の使用密度は、農薬の種類、使用量、作付面積から計算する。農業技術体系データベースおよび農薬ナビを活用することで簡易に計算することができる。「環境管理参考濃度」は、化学物質についての自主管理を進めるため、人の健康あるいは水生生物に対して長期間暴露されても悪影響を与えないと推定される大気及び水環境中の濃度であり、公表値を用いる。
- ほうれんそう栽培への適用例では、環境リスクは春どり・夏どり栽培で高く、秋どり・寒じめ栽培で小さくなる。使用農薬数や農薬費とは必ずしも一致しない(表1)。
成果の活用面・留意点
- 「環境管理参考濃度」は、横浜国立大学・エコケミストリー研究会(http://env.safetyeng.bsk.ynu.ac.jp/ecochemi/PRTR.html)の成果を活用している。これらの値は、現在PRTR対象物質(「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」における「第一種指定化学物質」)について公表されている。
- 農薬は、実際には散布後の農地で分解等が行われる。このため、「農薬の使用農地危険度」は、現実の物理量的意味を持つものではなく、農薬の負荷を統一尺度で点数化するための相対的な指標である。
- 「農薬の使用農地危険度」の単位がミリメートルであることの直感的な理解としては、散布する農薬の土壌中への移動や分解等を考慮しない初期状態において、使用した農地が何ミリメートル分に相当する水で希釈されたときに環境管理参考濃度になるかを表すというものである。
具体的データ


その他
- 研究課題名:生産・流通IT化のための農業技術体系データベース及び意思決定支援システムの開発
- 課題ID:222-b
- 予算区分:基盤研究費
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:佐藤正衛、南石晃明
- 発表論文等:佐藤・南石・菅原ら(2007)農業情報研究,16(1):(印刷中)