新型トウガラシマイルドモットルウイルス系統のトバモウイルス抵抗性遺伝子L4を打破する因子

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要約

新型トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)系統の外被タンパク質に認められる2残基の変異アミノ酸は、Capsicum 属植物が保有する既知のトバモウイルス抵抗性遺伝子L1~L4の機能を打破する因子である。

  • キーワード:ピーマン、臭化メチル、モザイク病、抵抗性遺伝子、トウガラシマイルドモットルウイルス、新型ウイルス系統
  • 担当:中央農研・生物的病害制御研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8481、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)、野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

Capsicum属植物にはトバモウイルスの感染に対して過敏感反応により抵抗性を示すL遺伝子群(L1~L4)が知られている。トバモウイルスに対して最も広範囲の抵抗性を示すL4抵抗性遺伝子を保有するピーマン(Capsicum annuum L.)品種にウイルス様モザイク症状が発生した。本病原ウイルスは、何れのL遺伝子を保有するCapsicum属植物であっても全身感染する新型トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)系統であり、L1~L4遺伝子の各抵抗性に対応して区分されるウイルスの病原型では未知となるP1,2,3,4と断定された。そこで、本新型ウイルス系統(以下、L4BV)の全ゲノムを解析し、L3およびL4遺伝子保有ピーマンに感染できない本邦標準型PMMoV-J(病原型P1,2)のゲノムとの塩基置換実験により、L4BVのL遺伝子群の機能を打破するウイルス因子を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • L4BVの全ゲノムは6,356塩基から成り(登録番号:AB276030)、他のトバモウイルスと同様に少なくとも4つのタンパク質翻訳領域(130k/180k複製酵素、細胞間移行タンパク質(MP)、外被タンパク質(CP))を持つ(図1)。
  • L4BVのゲノムは、本邦標準型PMMoV-J(病原型P1,2)と比較して同義変異144塩基、非同義変異17塩基の違いがある(図1)。
  • 大韓民国標準型PMMoV-Kr(病原型P1,2)と比較すると同義変異19塩基、非同義変異7塩基に違いがあり、L4BVは本邦標準型より大韓民国標準型に近似している(図1)。
  • 本邦標準型PMMoV-J(病原型P1,2)のCPを、46および85残基目のアミノ酸だけが異なるL4BV(病原型P1,2,3,4)のCPに置換すると、その変異ウイルス(TPC4685)は何れのL遺伝子を有するCapsicum属植物にも全身感染できる病原型P1,2,3,4へと変貌する(図2、表1)。
  • CP内に見出された2残基の変異アミノ酸の内、片方の変異のみを持つウイルス(TPC46またはTPC85)はL4遺伝子の抵抗性機能を打破できない(図2、表1)。

成果の活用面・留意点

  • L4BVは、Capsicum属植物の新たな抵抗性遺伝子を探索するための検定用ウイルス系統になる。
  • L遺伝子群の中で最も広範囲の抵抗性を示すL4遺伝子を打破するL4BVの発生は、抵抗性品種のみに依存した本病の防除体系では不十分であることを示唆している。
  • 本モザイク病の防除には、生物防除、物理的防除等の他の技術と組み合わせた総合防除体系が必須である。

具体的データ

図1 新型PMMoV 系統(L4BV)のゲノム配列とPMMoV-J(本邦標準型)またはPMMoV-Kr(大韓民国標準型)のゲノム配列との比較

図2 Capsicum chacoense (L4/ L4) における各変異ウイルスの病徴(接種15 日後)

表1 新型PMMoV 系統の外被タンパク質に見出されたアミノ酸変異を個々に導入した変異ウイルスのCapsi cum chacoense (L4/L4) 感染後に現れる病徴

 

その他

  • 研究課題名:誘導抵抗性等を活用した生物的病害抑制技術の開発
  • 課題ID:214-d
  • 予算区分:生物機能
  • 研究期間:2005~2006年度
  • 研究担当者:津田新哉、神田絢美、大西純、濱田博幸、源田佳克(日本園研)