メロンえそ斑点ウイルスのえそ病徴決定因子の特定
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要約
メロンえそ斑点ウイルス(MNSV)のゲノムにコードされる第一複製酵素は、本ウイルスの主病徴「えそ」の決定因子である。MNSV感染細胞では、第一複製酵素の働きによりミトコンドリアは変形・凝集等を起こし、活性を失う。
- キーワード:メロンえそ斑点ウイルス、メロン、えそ病徴、病徴決定因子、ウイルス複製酵素、ミトコンドリア
- 担当:中央農研・昆虫等媒介病害研究チーム
- 連絡先:電話029-838-8481、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:共通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
メロンえそ斑点ウイルス(MNSV)は感染メロンの果実内部に空洞・空隙症状等を発症させ、経済的に著しい被害を引き起こす土壌伝染性の重要病害ウイルスである。MNSV感染後にメロンで発症する病徴は、頂葉や側枝葉に現れる小斑点、摘芯期以降の成熟した葉に発生する大病斑、地際部の茎にえそを生じるトリアシ状茎えそ等様々であるが、何れもえそ症状を主体とした病徴である。そこで本研究では、MNSVの感染からえそ病徴発現に至るまでの発病機構を解明するため、ウイルス側のえそ病徴決定因子を究明し、感染細胞内での本ウイルス因子の作用を明らかにする。
成果の内容・特徴
- MNSVの第一複製酵素(p28)遺伝子をアグロインフィルトレーション法によりNicotiana benthamianaで発現させると、接種3日後に処理した部分がえそになる(図1、赤丸内)。一方、MNSVの他の遺伝子を発現させた部分ではえそにならない(図1、黒丸内)。
- MNSV接種メロン子葉のえそ病斑直近の細胞内で認められるミトコンドリアの変形・凝集等の異常形態は(図2)、p28を単独発現させたN. benthamiana細胞内でも観察される。
- メロンプロトプラストにMNSVを接種すると、ウイルスの蓄積は接種6時間後から認められ、接種9時間後にはミトコンドリアの活性が喪失する。MNSV非感染細胞ではミトコンドリアの活性は実験期間を通して持続する(図3)。
- 以上から、MNSVの第一複製酵素は感染植物に現れるえそ病徴の決定因子である。また、MNSV感染後のえそ発症直前の組織内細胞では第一複製酵素の発現によりミトコンドリアの形態異常と活性の喪失が起こる。
成果の活用面・留意点
- 本研究成果は、MNSV感染細胞でのミトコンドリア不活化からえそ病徴発現に至るまでのシグナル伝達経路解明の端緒となる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:病原ウイルス等の昆虫等媒介機構の解明と防除技術の開発
- 課題ID:214-e
- 予算区分:高度化事業、菌媒介ウイルス
- 研究期間:2003~2006年度
- 研究担当者:津田新哉、望月知史、大西純、大木健広