イネウンカ類長距離移動の多段経路を推定する方法

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要約

日本でのウンカトラップ誘殺データ数を用いて後退軌道解析を行い、、飛来源を推定する。その地点のにおけるの日最高・最低気温有効積算温度を用いて1,21,2世代前の飛来日を推定する。その飛来日から後退軌道解析を繰り返して1次飛来源を推定することで、、東アジア全体個体群での移動経路を推定できる。

  • キーワード:イネウンカ類、東アジア個体群、長距離移動、後退軌道解析、有効積算温度温量、東アジア個体群
  • 担当:中央農研・データマイニング研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7176、電子メールaotuka@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・情報研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

イネウンカ類は長距離移動性害虫で、その東アジア個体群は、主にベトナム北部から中国南部を経由して日本に飛来すると考えられている。中国南部から日本に飛来する場合は、日本のトラップデータと後退軌道解析手法を用いて直接的な飛来源が推定されてきた(平成15年度成果情報)。しかし中国などでのトラップのウンカ誘殺データは入手が困難なため、それから先の、日本に影響するベトナム北部などなどの1次飛来源から中国への移動経路については具体的な解析事例がなかったない。
そこで本研究は、東アジア個体群について、中国での詳細な誘殺情報データがない場合でも、日本を起点として後退軌道解析と発生世代の推定を繰り返して、周年発生地であるベトナム北部までの移動経路を推定する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 図1に本手法の解析手順を示す。まず、日本でのトラップデータによりから、飛来源を推定するための後退軌道解析の起点を決定する。表1は、九州でトビイロウンカの大発生がみられした2005年のに,佐賀県嬉野市のライトトラップに誘殺されたでのトビイロウンカの誘殺数を示している。ここでは最初に多飛来があった7月10日を起点とする。
  • 数値気象シミュレーションモデルを用いて7月10日を含む前3日間のシミュレーションを行い、風速など大気場を再現する。
  • その大気場を用いて、ウンカの後退軌道を計算する。軌道の終点時刻は、明け方か夕方の飛び立ち時間に設定し、終点の2次元分布を求める(図1、2)。この例では7月8日に中国南部を飛び立ったと推定されている。
  • 中国南部における求められた終点分布から中国での任意に(この部分の「任意」の意味が不明。)起点となる気象観測地点を選択する。例では江西省吉安市(北緯27.1度、東経114.9度、図3、4の★の位置)を選択起点としている。
  • 気象データベースより起点の日最高気温と最低気温を取得する。次に推定された飛び立ち日から時間を遡りながら、NOAA の気象データベースより取得した,起点の日最高・最低気温三角法を用いてによりトビイロウンカの日別有効温量を積算する積算温度を求める(図2、3)。この場合,発育ゼロ点を12°Cとし,一世代経過に必要な関さん積算温量を398度日日度とする。この図3の例では、トビイロウンカの2世代前の飛来日はを5月4日と推定されるしている。
  • 選択された地点の推定された飛来日を起点として再び後退軌道を行い計算し、飛来源を推定する(図3、4)。周年発生地はベトナム北部であると考えられているので、飛来源がベトナム北部となるように、4から6を繰り返して地点を探索する。この図4例では、5月4日の吉安市上空がを起点適合地点として見つかった、飛来源がベトナム北部であると推定していされる例である。図5はその他の地点の結果を示す。
  • 本手法で推定された移動経路の位置や時期は、ベトナム北部のライトトラップによる誘殺ピークや,中国各省の植物保護ステーションから出されている発生予察情報東アジア個体群の長距離移動に関する種々の報告とよく一致するしている。

成果の活用面・留意点

  • 本手法により、日本に飛来する主要な経路・飛来源が推定され、そこでの水稲品種、使用農薬など栽培情報は、薬剤感受性、抵抗性品種加害性の変化等の理解に役立てられる。

具体的データ

図1 解析手順表1 2005 年嬉野ライトトラップのトビイロウンカ誘殺数図2 後退軌道の終点分布7 月10 日の佐賀県嬉野市上空、を起点とし、8 日21 時(世界標準時)を終点とした時の分布

図3 吉安市の有効積算温量図4 後退軌道の終点分布図5 条件を満たした地点

 

その他

  • 研究課題名:情報融合による高精度害虫飛来予測モデルの開発
  • 課題ID:222-c
  • 予算区分:基盤、地球観測
  • 研究期間:2005~2006年度
  • 研究担当者:大塚彰、松村正哉(九州沖縄農研)、渡邊朋也