ダブルローナタネ品種の根に、実にはないグルコシノレートが存在する

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要約

日本の無エルシン酸ナタネ4品種に6種類のグルコシノレート(GSL)が含まれている。ダブルロー品種「キラリボシ」では、莢・種子のGSL含量が低下するが、根のGSL含量の低下は見られない。また、「キラリボシ」幼植物の根にはグルコナスチュールチインが高い濃度で存在し、この物質は発芽阻害作用があるイソチオシアネートを生成する。

  • キーワード:無エルシン酸、ナタネ、グルコシノレート、HPLC、ダブルロー
  • 担当:中央農研・バイオマス資源循環研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7038、電子メールysatoko@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・バイオマス研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

転換畑を利用したバイオマス利用による地域循環システム実用化のためナタネ-ヒマワリ体系に着目しているが、昨年までの試験でナタネ跡ヒマワリに生育抑制が認められた。この要因の一つとしてナタネに含まれるGLSに着目する。日本には心臓疾患の原因となるエルシン酸を含まない無エルシン酸ナタネが4品種育成されており、このうち「キラリボシ」は種子のGSLも低いダブルロー品種である。GSLの分解産物には抗菌性や他植物への生育阻害等の生理作用が知られており、ナタネ植物体におけるGSLに関する情報はナタネ-ヒマワリ体系を確立する上で重要である。そこで、日本の無エルシン酸ナタネ4品種におけるGSL組成と含量の推移を調査する。

成果の内容・特徴

  • アブラナ科植物には数十種のGSLが確認されており、今回日本の無エルシン酸ナタネ4品種でHPLCにより検出されたGSLは主に6種類(表1)である。この中に分解産物として揮発性のイソチオシアネート(ITC)を生成するグルコナピン、グルコブラッシカナピン、グルコナスチュールチインが認められる。
  • 日本の品種に多いとされているプロゴイトリンやグルコナピンは莢・種子に存在し、茎や根では開花終以降ほぼ消失する(表2、図1)。収穫期のGSLは「キザキノナタネ」では、莢・種子に多く存在し、プロゴイトリンやグルコナピンが特に多い。茎ではGSLは検出されないが、根ではグルコナスチュールチインやグルコブラッシシン等が検出される(表2)。また、「アサカノナタネ」「ナナシキブ」でも同様に根でグルコナスチュールチインやグルコブラッシシン等が検出される。
  • ダブルロー品種「キラリボシ」では莢・種子のGSLは「キザキノナタネ」に比べ低減されるが、根には「キザキノナタネ」と同程度のグルコナスチュールチインやグルコブラッシシンが検出される(表2)。
  • ダブルロー品種「キラリボシ」の幼植物(発芽後約1ヶ月)にGSLが認められ、特に根のグルコナスチュールチインが極めて多い(図2)。

成果の活用面・留意点

  • GSLは種類により作物の発芽抑制や殺菌作用などそれぞれの分解産物の働きが異なるため、ナタネのGSLによる作物等への影響を検討するための基礎知見となる。
  • 種子のGSL含量が異なる品種間においても、根では同等なグルコナスチュールチーンやグルコブラッシシン等が検出されたことから、これらGSLの植物等に対する生理作用を検討し、育種の選抜過程における基礎知見とする。

具体的データ

表1.日本の無エルシン酸ナタネ4品種で検出された主なGSL

表2.収穫期のナタネにおける主なGSL 含量(2005 年)

図1.キザキノナタネの登熟期間における部位別の主なGSL 含量の推移(2005 年)図2.キラリボシ幼植物(発芽1ヶ月)における主なGSL 含量(2006 年)

その他

  • 研究課題名:温暖地における油糧作物を導入したバイオマス資源地域循環システムの構築
  • 課題ID:411-c
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:安本知子、松崎守夫、岡田謙介