5月直播と大麦収穫後の飼料イネ生産技術体系

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

「コシヒカリ」との収穫時の作業競合を回避して乾物実収量1t以上を目指す飼料イネの生産技術体系である。作付計画には収穫時期が予測できる「支援ツール」、収穫作業には「ロールキャリア」により作業能率を高められる。

  • キーワード:稲発酵粗飼料、クサユタカ、作業競合回避、多収、夢あおば
  • 担当:中央農研・北陸大規模水田作研究チーム
  • 連絡先:電話025-526-3218
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作、共通基盤・総合研究(飼料イネ)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

北陸地域のような水田地帯における飼料イネ生産は、食用イネとの作業競合を避けながら多収で高品質な飼料イネの生産技術体系を確 立することが重要である。そこで、乾物実収量1t以上を目指す5月の適期播種の湛水直播栽培と北陸地域に栽培が多い大麦収穫後の飼料イネ生産技術体系を開 発した。

成果の内容・特徴

  • 5月播種の湛水直播栽培で1t/10a以上の乾物実収量を得るためには、約350本/m2の穂数とそれを得るための苗立ち数約140本/m2を目標とする。これにより5月直播 (品種:夢あおば)による実収量は、最大1360kg/10aになる(図1)。収穫期は8月下~9月上旬となり「コシヒカリ」の収穫作業と競合しない。
  • 大麦収穫後栽培の場合、「コシヒカリ」の収穫作業との競合を避けるためには「夢あおば」を6月中旬に直播するか、「クサユタ カ」を6月中旬または「夢あおば」を6月下旬に移植する。多収のためには、出穂~収穫までの気温を充分に確保することが重要で、これにより、直播の最大実 収量は981kg/10a、移植(品種:クサユタカ)は1007kg/10aになる。なお、収穫機による刈取りは、品質に影響を与えない程度に刈高さを低 くする。
  • 食用イネ収穫との作業競合を回避するための作付計画を立案するために、生育ステージ予測モデルに基づく「播種・収穫作業計画 支援ツール」(支援ツール)が利用できる。飼料イネや「コシヒカリ」の播種日、移植日を入力すると収穫期が算出・表示され、収穫面積等を入力すると収穫期 間が表示される(図2)。
  • 刈取り作業をしながらロールベールを運搬できるロールキャリア(図3)を使用すると作業能率を最大35%向上することができる。
  • 本技術体系を大規模水田作経営に適用し、飼料イネ生産(20ha程度)を行うと、費用合計は5万円/10a前後(労働費1万円を除く)と なる。また、稲発酵粗飼料を大家畜経営に30円/kgで販売し、4万円/10aの産地づくり交付金が得られるならば、自作地の場合で約2万円/10aの所 得が確保できる。

成果の活用面・留意点

  • 北陸地域など「夢あおば」、「クサユタカ」の作付地における生産技術体系として活用できる。実証試験は上越市及び長岡市で行った。技術体系の詳細については「北陸版:稲発酵粗飼料・大麦生産利用技術マニュアル No.1~10」を参照にすること。
  • 実収量は、専用収穫機(フレール型)で収穫・梱包し、ベールラッパによる密封後にロールベールの重量を計量して測定した。収 穫時の刈高さを低くできるように、水田の水管理に留意する。大麦収穫後の飼料イネ栽培は、虫害(イネツトムシ、コブノメイガ)を受けやすいので適期の防除 を行う。実収量1t/10a以上の時のTDNの平均は59.1%である。
  • 「播種・収穫作業計画支援ツール」は、Microsoft Excel2000以上を必要としソフトウェアは http://cse.naro.affrc.go.jp/ryouji/SagyouSim.htm からダウンロードできる。ロールキャリアは(株)ロールクリエート(0155-62-5676)より販売中である。

具体的データ

図1 乾物実収量1t/10aを目指す生産技術体系と技術のポイント

 

図2 収穫期が予測できる播種・収穫作業計画支援ツール 図3 収穫時の作業効率が高められるロールキャリア

 

その他

  • 研究課題名:北陸地域における大規模水田作の高精度管理技術と高品質飼料イネ生産技術の開発
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:交付金プロ(北陸大麦飼料用稲輪作)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:湯川智行、元林浩太、土田志郎、佐々木良治、小島誠、松村修、大嶺政朗、齋藤仁蔵、宮武恭一、伊藤誠治、関誠(新潟農総研)、佐藤徹(新潟農総研)、服部誠(新潟農総研)、守屋透(新潟農総研)
  • 発表論文等:
    1)佐々木ら(2006)、農作業研究41(2):59-67
    2)元林ら(2008)、農機誌70(1):72-78