市販の家庭用電撃殺虫器で害虫をリアルタイムにモニタリング

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要約

安価な家庭用電撃殺虫器内にフェロモンを入れることで特定の害虫のみを誘引・殺虫でき,これをフィールドサーバに接続すると害虫の発生と環境データを同時にモニタリングできる。

  • キーワード:フィールドサーバ、害虫、モニタリング
  • 担当:中央農研・フィールドモニタリング研究チーム、斑点米カメムシ研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7177
  • 区分:共通基盤・情報研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

露地野菜の害虫管理技術として合成性フェロモンによる発生予察、交信攪乱法の導入が試みられている。通常1~数カ所に設置された トラップによる捕獲数で発生予察が行われているが、正確かつ効率的な害虫管理のためには圃場単位でモニタリングする必要がある。しかし、多数のトラップの 設置及び長期間の計数を人手で行うことは困難である。一方、既存の自動害虫計測装置は、精度は高いものの極めて高価である。複数地点で長期モニタリングす るには、精度は多少低くても安価で簡便なカウンタと通信機能が必要である。

成果の内容・特徴

  • ホームセンター等で市販されている家庭用電撃殺虫器の蛍光灯を外し、代わりにフェロモンを塗布した棒を取り付けると簡易フォロモントラップとなる。殺虫時に発する電撃パルスは安価なワンチップマイコン(H8 Tiny)によるカウンタで計数される(図1)。
  • 電撃殺虫器は1000V前後の高電圧で動作しているため、電極部とカウンタを有線で接続することは安全性の面で好ましくない。そのため、電撃時に発生する電磁波を電撃殺虫器の近くに設置したコイルで受信し、受信信号をパルスに整形してカウントを行う。
  • カウンタはフィールドサーバとシリアル通信(RS-232C)で接続され、ユーザはフィールドサーバを経由してカウンタを遠 隔操作できる。一定時間間隔でカウント値の読み込みとカウント値のクリアを行うと、フィールドサーバの収集データ(気温等環境データと画像)の一項目とし て扱うことが出来る。
  • 家庭用電撃殺虫器は安価であるが、電撃放電のパワー(電圧×電流)が小さいため、コナガの場合、ジリジリと放電を繰り返しながら致死に至 る。このとき発生する電磁波は短時間の単一パルスではなく、不連続に発生する非常に複雑な波形となる。そのため、検出感度が低いとカウントし損なうことが あり、逆に検出感度が高いと1個体の電撃を複数回カウントしてしまうことがある。しかし、パルスのカウント数と実殺虫数の関係は検出感度が異なってもほぼ 正比例しており、カウント数を正規化することでその影響を除去できる(図2)。
  • カウンタには汎用性があり、スイッチのON/OFFもカウントできる。転倒枡形雨量計を接続するとフィールドサーバで雨量をモニタリングすることが出来る。

成果の活用面・留意点

  • 電撃殺虫器には、蛍光灯が点灯していないと電撃用高圧電源の出力を自動的に停止する安全回路が付いている機種がある。その場合には安全回路をカットして用いる。
  • 市販の電撃殺虫器はAC100Vで稼働するが,屋外配線を100Vで行うのは危険である。安全のため12V直流で供給し,車載用DC-ACインバータで100Vに変換して用いる。
  • 家庭用電撃殺虫器はパワーが小さいため、電極表面に昆虫の死骸がこびり付くことがある。その場合、電撃殺虫器に同梱されたブラシで電極部を清掃する。

具体的データ

図1 自動害虫計数システムの構成

図2 電撃パルスカウント値と目視による捕獲頭数

その他

  • 研究課題名:フィールドサーバの高機能化と農作物栽培管理支援技術の開発
  • 課題ID:222-a
  • 予算区分:生物機能
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:平藤雅之、渡邉朋也
  • 発表論文等:フィールドサーバを利用した電撃パルス計測システム、特願2007-004265