ダイズ・コムギ作での浅耕栽培の継続が水田転換畑作土層の理化学性に及ぼす影響

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要約

水田転換畑のダイズ・コムギ栽培において、小明渠作溝同時浅耕施肥播種と無中耕無培土管理を連続して行うことにより、浅耕部分の全炭素、全窒素含有量、交換性カリ、有効態リン酸含量が増加する。

  • キーワード:水田転換畑、浅耕栽培、全炭素・全窒素含有率、交換性カリ、有効態リン酸
  • 担当:中央農研・水田輪作研究東海サブチーム
  • 連絡先:電話059-268-4610
  • 区分:共通基盤・土壌肥料・総合研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

小明渠作溝同時浅耕播種は、高い湿害軽減効果と作業能率が期待できることから、ダイズ・コムギの共通的な播種方法として三重県を 中心に普及面積が増大しつつある。ダイズにおけるこの播種法は、無中耕無培土栽培と組み合わされる(以下浅耕栽培)ことが多く、事前と播種時の2工程から なる耕起や中耕培土作業等を含む慣行栽培に比べ、少ない耕起回数、浅い耕起深、前作残さと施肥が土壌表層に混和される等の特徴がある。現地実証試験では、 浅耕栽培の場合にダイズが増収する傾向が認められるため、浅耕栽培における施肥管理等の指針を得る目的で、ダイズ3作とコムギ2作(以下3年5作)にわた り浅耕栽培と慣行栽培を継続した水田転換畑圃場の土壌理化学性の変化を調査する。

成果の内容・特徴

  • ダイズ・コムギを3年5作浅耕栽培した後の土壌の浅耕部分の0~5cmでは、浅耕下層部分の5~15cmに比べ、全炭素、全窒素含量、交換性カリ、有効態リン酸の含量が有意に高まる傾向が認められる(図1)。作土層0~15cmの理化学性では、慣行栽培に比べ有効態リン酸含量が有意に高まり、全炭素、全窒素含量も増加する傾向が認められる。しかし、交換性カリ含量は慣行栽培では有意に低下する(図2)。
  • 試験開始時の作土層0~15cmの風乾土容積重は、慣行栽培区が1.08±0.008、浅耕区が1.10±0.007である が、3年5作後は、慣行栽培区の0~15cmでは0.99±0.013、浅耕栽培区の0~5cmでは、0.98±0.015とわずかに減少する。未耕状態 が続く浅耕下層部分の5~15cmでは1.02±0.007と変化が小さい。
  • ダイズの坪刈り収量は、浅耕栽培の場合に増加する傾向が認められる(図3)。
  • 浅耕部分の全炭素、全窒素含量、交換性カリ、有効態リン酸の含量が高まることは、肥料と収穫残渣の鋤込みが浅耕部分に繰り返されるためと 考えられる。深さ15cmまでの作土層としての土壌理化学性を見ると、浅耕栽培では全炭素、全窒素含量、有効態リン酸が蓄積する方向に変化し、交換性カリ の減少を抑制する傾向が認められる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は2003年から2005年に水田転換畑(沖積土)において、ダイズ3作、コムギ2作を小明渠作溝同時浅耕施肥播種し、無中耕無培土栽培を行った圃場の結果である。
  • 本成果の慣行栽培は無中耕無培土管理を行ったため、農家慣行と異なる。
  • 小明渠作溝同時浅耕施肥播種法については、2005年度成果情報「ダイズの湿害軽減のための広畦成形・浅耕播種技術」を参照。
  • ダイズ・コムギの3年5作によって、浅耕栽培では0~5cmの部分が膨軟化することから、土壌分析結果に風乾土容積重を乗じ100cm3当たりの含量に補正して提示した。
  • 小明渠作溝同時浅耕施肥播種法と無中耕無培土管理が連続することで、作土の理化学性が慣行栽培と異なる状態になると考えられるため、本成果は新たな施肥基準、肥培管理法策定に向けての参考資料となる。

具体的データ

図1.浅耕栽培3年5作後の浅耕部分0~5cmと浅耕下層5~15cmの理化学性

 

図2.3年5作後の慣行栽培と浅耕栽培の作土層0~15cmの理化学性 図3.ダイズ坪刈り収量

 

その他

  • 研究課題名:関東・東海地域における高生産生水田輪作システムの確立
  • 課題ID:211-k
  • 予算区分:委託プロ(ブラニチ2系)
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:増田欣也、渡辺輝夫、松尾和之