ダイズちりめんじわ発生条件の解明と石灰または微量要素施肥によるしわ粒発生率の軽減

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要約

ダイズ「エンレイ」のちりめんじわ発生率は、子実肥大盛期の切葉処理で増加する。また、石灰、三要素肥料を無施用で連作栽培する と成熟期の早期化と収量低下に伴い高まるが、石灰施用により軽減される。また、潜在的な微量要素欠乏土壌では、微量要素複合肥料の施用によりしわ粒発生率 は軽減される。

  • キーワード:ダイズ、ちりめんじわ、切葉、石灰、微量要素複合肥料
  • 担当:中央農研・北陸水田輪作研究チーム
  • 連絡先:電話025-523-4131
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

北陸産ダイズは上位等級比率が低く、主な3等格下げ理由はしわ粒となっており、しわ粒の発生を軽減することは喫緊の課題である。 これまでにちりめんじわは、子実肥大盛期前後の作物体の老化が関係し、施肥等の生育後半の栄養状態の改善が有効であることが報告されている。しかしなが ら、しわ粒の発生条件や軽減化のための対策技術については不明な点が多い。そこで、ちりめんじわについて、しわ粒を多発させる条件及び軽減させる方策を明 らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 生育時期別に切葉処理(ソースを制限)を行うと、子実肥大盛期を中心にちりめんじわ発生率は高まる。その傾向は石灰、三要素肥料とも無施用区で顕著である(図1)。
  • 石灰、三要素肥料とも無施用で連作栽培すると、落葉期、成熟期が早期化し、子実収量が低下し、ちりめんじわ発生率は増加する(表1、図1)。
  • 石灰、三要素肥料とも無施用で連作栽培し酸性化した土壌に、石灰のみ、または石灰と三要素肥料を施用すると、成熟期が遅延 し、ちりめんじわ発生率は、無施用の31 %から石灰のみでは14 %、石灰と三要素の施用では12 %に低下する。したがって、しわ粒発生率の軽減は石灰施用による効果と考えられる(表2)。
  • ホウ素等の微量要素が潜在的に欠乏している可能性がある土壌でも、ちりめんじわ発生率は高まる傾向が認められる。微量要素複合肥料の施用により子実中のホウ素含量は高まり、ちりめんじわ発生率が減少することが認められる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • ダイズ品種は「エンレイ」である。
  • 潜在的欠乏とは欠乏症状は確認できないが、施肥により収量、品質が向上する状態をいう。
  • 微量要素は至適濃度範囲が狭いため、現場での施肥量は土壌診断に基づいて考慮する。

具体的データ

図1. 時期別の切葉処理が成熟期のちりめんじわ発生率に及ぼす影響.

 

 

表1.無施用及び慣行施用の連作栽培によるちりめんじわ発生率と収量構成要素の経年変化.

 

 

表2. 無施用連作栽培した土壌への石灰及び慣行施用がちりめんじわ発生率及び作物体の形質に及ぼす影響

 

 

表3. 生産農家圃場における微量要素複合肥料の上乗せ施用がちめんじわ発生率、収量構成要素及び子実中のミネラル元素濃度に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 課題ID:211k
  • 予算区分:基盤、高度化事業(しわ粒)
  • 研究期間:2004~2007年度
  • 研究担当者:関口哲生、小原洋、新良力也、亀川健一、大野智史、田渕公清
  • 発表論文等:関口ら (2008) 土肥誌、79 (1) : 81-85