黒ボク土畑における牛ふん堆肥由来窒素の作物による吸収と土壌残存

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要約

重窒素で標識した牛ふん堆肥窒素のトウモロコシ-コムギ体系による吸収率は7作合計で14%であり、作土への残存率は67%と高い。硫安併用が残存率に与える影響は小さい。内田のモデル式により標識堆肥窒素の10年後の土壌残存率は46%と推定される。

  • キーワード:重窒素標識、コムギ、トウモロコシ、窒素吸収、家畜ふん堆肥、硫酸加水分解
  • 担当:中央農研・資源循環・溶脱低減研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8829
  • 区分:共通基盤・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

家畜ふん堆肥には施用当作期間中に有効化しない窒素が含まれているため、残効を含めた窒素の肥効評価が必要である。従来の埋設法 による測定は土壌窒素と堆肥窒素の区別ができない、実際の施用法と異なるなどの問題点がある。安定同位体(重窒素)の利用によりこれらの弱点を克服できる が、重窒素標識堆肥を用いた露地畑での長期的な知見はほとんど皆無である。そこで、黒ボク土畑において年2作(トウモロコシ-コムギ)の体系で、1作目に 施用した重窒素標識牛ふん堆肥中窒素の長期的な挙動を調べる。

成果の内容・特徴

  • 作物による窒素吸収量は、試験開始2年目までは、標識堆肥4t/10a単用よりも硫安併用や、硫安単用で多いが、3年目から標識堆肥単用が上回る(図1)。
  • 硫安併用の有無にかかわらず、1年目のトウモロコシおよびコムギによる標識堆肥窒素の利用率は5%で、2年目以降も継続して吸収され、7作合計で14%程度であった(図2)。
  • 7作後における標識窒素の作土残存率は、堆肥で67%、硫安で9%である(図3)。堆肥の窒素残存率の推移には、硫安併用の影響が認められない。
  • 残存率の推移を内田のモデル式にあてはめると、堆肥窒素は易分解性7.6%、中位分解性19.6%、難分解性72.9%に分画できる(図3、表1)。このモデル式により、標識堆肥窒素の10および20年後の残存率は、それぞれ46%、29%と推定される。
  • 硫酸加水分解、デタージェント分析、塩酸加水分解などの簡易法で堆肥窒素を分画すると、難分解性画分は硫酸加水分解によるプール2とプール3の合計に相当した(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、茨城県つくば市で淡色黒ボク土に施用した情報であり、黒ボク土畑において牛ふん堆肥を施用する際の参考となる。
  • 用いた標識牛ふん堆肥は標識サイレージを乳牛に給餌して作製した(松波・寶示戸、76、153、2005)。堆肥化過程で副資材は添加されていない。

具体的データ

図1 作物の全窒素吸収量の推移

図2 標識窒素利用率の推移 図3 標識窒素の残存率の推移

 

表1 内田のモデル式と堆肥窒素の分画

その他

  • 研究課題名:有機性資源の農地還元促進と窒素溶脱低減を中心にした農業生産活動規範の推進のための土壌管理技術の開発
  • 課題ID:214-q
  • 予算区分:交付金プロ(有機農業)
  • 研究期間:2003-2007年度
  • 研究担当者:高橋茂、岡紀邦(北海道農研)、小柳渉(新潟農総研)、井原啓貴、前田守弘、駒田充生