新潟県南部の積雪の変動

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要約

新潟県南部、上越地域では積雪相当水量の変動が非常に大きく、最小年には最大年の30%以下となる。これまで安定していると考えられてきた山地の積雪も、最小年には最大年の20%から60%程度に減少し、変動は非常に大きい。

  • キーワード:積雪相当水量、積雪モデル、積雪調査、山地積雪、上越地域、関川流域
  • 担当:中央農研・農業気象災害研究チーム
  • 連絡先:電話025-523-4131
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・農業気象
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

雪は重要な水資源である。特に山地の雪は、4月から5月の、水田の水需要が増大する時期にちょうど融けて河川に流出し、稲作を支 えている。また平地の雪に比べてその量は安定しているといわれている。しかし近年は3冬続きの豪雪(1984、85、86冬)のあと暖冬少雪が続くなど極 端な変動が見られる。さらに地球環境変化にともなう降積雪の変化も予想されており、地域の水利用計画や、水利施設の整備計画を考えるためには積雪の変動に 関する情報が重要である。
  そこで、現地調査と積雪モデルにより、積雪の変動の様子を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 新潟県南部、上越地域を対象とした1990冬から2007冬までの積雪調査の結果、積雪相当水量は、2006冬が最大、 2007冬または1990冬が最小であった。標高300~1500mの範囲で、積雪相当水量がほぼ最大となる2月下旬または3月下旬の値について、18冬 中の最小値と最大値の比(%)は、標高ときわめてよい直線関係にある(図1)。標高が高いほど比が大きくなり安定する傾向であるが、1000mで約30%、1500mでも50%以下と、高標高地でも変動は大きい。
  • 積雪モデルによると、流域平均積雪相当水量の1986冬から2007冬まで22冬の平均は、3月中旬ころに最も増加して、約700mmとなる。流域平均積雪相当水量は2006冬がほぼ最大、2007冬がほぼ最小であり、最大時期には2006冬は2007冬の約4倍である(図2)。東北地方の2006冬は2007冬の約2倍という報告に比べると、変動は非常に大きい。
  • 積雪モデルの推定結果から、22冬の積雪相当水量の最小値と最大値の比(%)を標高別に見ると(図3)、標高の高いところほど、比の大きい、すなわち積雪相当水量の安定している期間が長い。3月下旬に~1000mでは約30%、~1500mでは約50%と積雪調査の結果とよく一致しており、標高の高い地域でも変動は大きい。
  • 流域流出量に占める融雪量の割合は4月では58~91%(平均76%)、5月では38~76%(平均59%)と非常に大きい(図4)。6月でも最大年には67%である。したがって、この時期の河川流量は積雪の変動の影響を大きく受けるので、注意が必要である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、新潟県南部、上越地方の関川流域に関する結果である。
  • 積雪調査は新潟県南部・上越地域を対象として継続的に行い、データを蓄積している。対象地域の大部分を関川流域が占め、面積は約1200平方kmである。定常的に調査する地点は約40地点である。毎冬、1月、2月、3月それぞれ下旬ころに調査する。

具体的データ

図1 標高と積雪相当水量の最小/最大(%)の関係。図2 関川流域について積雪モデルにより推定した積雪相当水量の時系列。

図3 積雪相当水量の22冬中の最小値/最大値(%)の時系列。図4 4月から6月の流出量に占める融雪量の割合。

その他

  • 研究課題名:高品質安定生産のための農業気象災害警戒システムの開発
  • 課題ID:215-c
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006-2010年度
  • 研究担当者:横山宏太郎、小南靖弘、中野聡史