安定性・可用性の高いハードディスクレス版エージェントボックス

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要約

回転部品であるハードディスクドライブをコンパクトフラッシュに変更し、書き換え限界へ対応する工夫を行うことで、フィールドサーバエージェントボックスの安定性を改善するとともに、定圧・高温環境下での動作範囲を拡大した。

  • キーワード:フィールドサーバ、エージェントボックス、安定性、可用環境、CF
  • 担当:中央農研・データマイニング研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7026、電子メール fserver@zoushoku.narc.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・情報研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

インターネットの接続状態の悪いところでフィールドサーバのデータを収集するために開発したフィールドサーバエージェントボック ス(FSAB)(H17成果情報)は、過酷な環境下で利用されることが多いため、回転部品であるハードディスクドライブは安定性・可用性の大きな制限要因 のひとつであった。例えば、タイのコンケンで行っているフィールドサーバによる観測では、暑さのため2.5インチのハードディスクドライブ(HDD)の基 板が焦げてしまい動作しなくなってしまった。また、ネパールの氷河湖の観測では標高3500mの空気が薄い地点に設置したが、空気の対流による放熱や HDDのヘッドの浮上に問題が生じ、FSABを利用することができなかった。このため、低い気圧や高温環境下でも動作する。
   近年、大容量のコンパクトフラッシュ(CF)が安価に利用できるようになってきた。CFをFSABで利用する場合、フラッシュメモリの書き換え限界が問題 となる。フラッシュメモリの書き換え限界に対応するための方法を検討し、これらのデバイスを用いてFSABの低圧・高温での可用環境を拡大するとともに安 定性を改善する。

成果の内容・特徴

  • 頻繁に書き換わるデータがあるディレクトリ/varをRAMディスクに確保するようにし、起動時・停止時・及び定期的に/varの内容をフラッシュメモリに書き出す。
  • 一部のデータ/var/apt/cacheなどは容量が大きくなるため、フラッシュメモリ上に置き、RAMディスクにシンボリックリンクを張っている(表1)。
  • ファイルへの最終アクセスタイムを記録しないように、/etc/fstabにnoatimeオプションを追加している。
  • USBメモリが挿入されている場合には、夜間に古いデータからUSBメモリにはき出し、空き容量が少なくなった場合には古いデータを消去して空き容量を確保する。このUSBメモリを郵送することでもデータを回収できる。
  • FSABのモニタのためFSABにクラスタシステムの監視ツールとして知られているgangliaを導入し、OpenVPNが繋がっている場合にはFSABの状態やFSの死活を簡単に把握することができる(図1)。
  • HDDが破壊されたタイのコンケンの小学校で運用している。

成果の活用面・留意点

  • 配布するCF用のベースイメージの展開には、別のLinuxシステムが必要である。
  • 停電が起きた場合、最大1時間分のデータが失われる。
  • システムは256MB以上のメインメモリを持っていることが望ましい。
  • 温室内など高温多湿環境でも利用可能である。
  • 低温環境への適用環境も拡大していると思われるが、テストが必要である。

具体的データ

表1 RAMディスク/varのシンボリックリンク表(代表的なディレクトリのみ)

 

図1 Gangliaによるコンケン(タイ)の小学校に設置したFSABのレポート

http://www.agrid.org/ganglia/

その他

  • 研究課題名:多様かつ不斉一なデータの融合によるデータマイニング技術の開発
  • 課題ID:222-c
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:木浦卓治、深津時広、平藤雅之、溝口勝(東京大学)
  • 発表論文等:Kiura, T. et al.: System Design and Results of Field Server Agent Systems in Himalaya and Thailand, APAN 25th meeting, Hawaii (Jan 23-25, 2008),
    http://www.apan.net/meetings/hawaii2008/presentations/ag/05-apan20080124kiura.pdf