大豆狭畦栽培で大麦によるリビングマルチは広葉雑草の密度と生育を抑制する

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要約

大豆狭畦栽培において、大麦によるリビングマルチは8月下旬以降の雑草の密度を30~75%に低下させ、大豆収穫期の雑草生体重を10~40%に低下させる。その雑草抑制効果は、イネ科雑草よりヒユ類などの広葉雑草に対して高い。

  • キーワード:大豆、狭畦栽培、雑草、リビングマルチ
  • 担当:中央農研・カバークロップ研究関東サブチーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8522
  • 区分:共通基盤・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

大豆と同時に秋播き性の高い麦類を播種するリビングマルチ栽培は、除草剤への過度の依存を回避できる環境保全型技術である。しかし、リビングマルチが持つ雑草抑制効果は、除草剤ほど安定していないことから、リビングマルチが利用可能な圃場は限定されると考えられている。そこで、麦類によるリビングマルチが利用可能な条件を示すために、リビングマルチが持つ雑草抑制効果の特徴を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ヒユ類などの広葉雑草とメヒシバやヒエ類のイネ科雑草が混在している圃場において、リビングマルチを利用して除草剤を使用せずに大豆を狭畦栽培した場合、初期の雑草の発生は、イネ科雑草、広葉雑草ともに抑制されないが、リビングマルチが枯死する8月下旬には、広葉雑草の雑草密度が低下する(図1)。
  • リビングマルチによる雑草抑制程度は、作付体系などの圃場条件によって異なるが、リビングマルチを利用することで、8月下旬の雑草密度はリビングマルチがない場合に比べて30~75%に低下し、大豆収穫時の雑草生体重は10~40%に低下する(図2)。
  • リビングマルチによる大豆収穫時の雑草生育抑制効果は、イネ科雑草よりヒユ類などの広葉雑草に対して高い(図3、図4)。

成果の活用面・留意点

  • 大豆栽培にリビングマルチを導入する際の参考資料となる。なお、大豆狭畦栽培におけるリビングマルチの有効性については、「大麦によるリビングマルチと狭畦密植栽培を組み合わせた大豆の雑草防除技術(2006年度成果情報:技術・参考)」で公表済み。
  • 本成果は、中央農研の転換畑圃場(灰色低地土)および畑圃場(淡色黒ボク土)において、小麦栽培後の大豆狭畦栽培(品種タチナガハ、畦間30cm、株間10~20cm、播種6月中旬)にリビングマルチとして大麦(てまいらず、播種量12g/m2で散播)を使用し、無中耕で行った試験によるものである。
  • 圃場の前歴等から雑草の多発が見込まれる圃場ではリビングマルチと土壌処理除草剤を併用する必要がある。

具体的データ

図1 リビングマルチの有無によるイネ科雑草と広葉雑草の密度の推移除草剤無処理の試験区の値を示す(2007年)。M+、M-はリビングマルチの有無を示す。図中のバーは広葉雑草、イネ科雑草それぞれの密度についての標準偏差。8/30はリビングマルチは枯死していた。

図2 リビングマルチによる雑草の密度低下と生育抑制除草剤無処理の試験区の値を示す(2007年)。転換畑圃場(ABCD、広葉雑草のヒユ類とシロザが優占し、イネ科雑草が混在)と畑圃場(E、ヒユ類等の広葉雑草とメヒシバ等のイネ科雑草が混在)の大豆収穫時の雑草生育量の値。圃場が同じものを点線で結んだ。AとBは大豆3作目、CとDは水稲と大豆を輪作して大豆2作目、Eは前作トウモロコシでその前まで大豆4作連作。ただしBとDは不耕起栽培。

図3 リビングマルチによる大豆収穫時の雑草生育抑制作付体系の異なる圃場(ABCDEは図2の圃場と同じ)での大豆収穫時の雑草生体重の値を示す。M+、M-はリビングマルチの有無を示す。

図4 リビングマルチによるイネ科雑草と広葉雑草の生育抑制効果の違い転換畑圃場と畑圃場の大豆収穫時の雑草生体重の値を示す(2007年と2008年)。 M+、M-はリビングマルチの有無を示す。

その他

  • 研究課題名:カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
  • 課題ID:214-c
  • 予算区分:生物機能
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:澁谷知子、浅井元朗、三浦重典、中谷敬子