土壌の種類および有機物施用が土壌微生物群集構造に及ぼす影響

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要約

細菌群集構造は有機物施用よりも土壌の種類に影響を受け易いのに対し、糸状菌群集構造は土壌の種類よりも有機物施用の有無や施用有機物の種類に影響を受け易い。

  • キーワード:PCR-DGGE、細菌群集構造、糸状菌群集構造、土壌の種類、有機物施用
  • 担当:中央農研・土壌生物機能研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8828、noka@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

近年、土壌微生物の群集構造について、国内以外を問わず土壌等の環境サンプルから直接抽出したDNA(環境DNA:eDNA)を用いた研究が行われている。しかしながら、必ずしも解析手法は同一でなく、また異なる気象条件下におかれた圃場に関する個別研究に留まる場合が多いこともあり、それぞれの結果を比較あるいは統合して群集構造に最も強く影響する要因等を導き出すことは困難である。一方、中央農研内には4種類の土壌(腐植質黒ボク土、黄色土、灰色低地土、淡色黒ボク土)が充填された人工枠圃場があり、異なる種類の土壌を用いた圃場試験を同一気象条件下で行うことが可能である。そこで、この圃場に3つの処理区(化学肥料区、牛ふん堆肥区、乾燥豚ぷん区)を設け、PCR-DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)法により、土壌の種類と有機物施用のいずれの要因が土壌微生物群集構造に影響を及ぼすか明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 作土層よりサンプリングを行った土壌の細菌群集構造のDGGEパターン(図1(A))に基づいて主成分分析を行うと、概ね処理区ごとよりも土壌の種類ごとに分かれる傾向がある(図2(A))。以上の結果より、土壌細菌群集構造は有機物施用よりも土壌の種類に影響を受け易い。
  • 一方、土壌糸状菌群集構造のDGGEパターン(図1(B))に基づいて主成分分析を行うと、概ね土壌の種類ごとよりも処理区ごとに分かれる傾向がある(図2(B))。以上の結果より、土壌糸状菌群集構造は土壌の種類よりも有機物施用の有無や施用有機物の種類に影響を受け易い。

成果の活用面・留意点

  • 土壌の種類によらず糸状菌群集構造は処理区ごとに類似していることから、糸状菌群集構造を有機物施用等の肥培管理により制御できる可能性がある。
  • PCR-DGGE法による土壌微生物群集構造解析は、細菌の16S rRNA遺伝子のV6-8可変領域および糸状菌の18S rRNA遺伝子のV1-2可変領域を標的とし、「eDNA」プロの共通手法(森本と星野(高田)(2008)土と微生物、62:63-68)に準じて行った。

具体的データ

図1 土壌細菌群集構造(A)および糸状菌群集構造(B)のDGGEパターンの一例

図2 土壌細菌群集構造(A)および糸状菌群集構造(B)のDGGEパターンに基づく主成分分析(2006年5月14日の結果)

その他

  • 研究課題名:土壌生物相の解明と脱窒などの生物機能の評価手法の開発
  • 課題ID:214-j
  • 予算区分:基盤、委託プロ(eDNA)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:長岡一成、鈴木千夏、島田敦之(香川県農試)、竹中眞
  • 発表論文等:Suzuki C. et al. (2009) Soil Sci. Plant Nutr. 55(1): 80-90