メロンえそ斑点ウイルス-スイカ系統の全ゲノム配列とRT-PCRによる検出

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要約

鳥取県のえそ症状を示すスイカから分離された球状ウイルスは、既知のメロンえそ斑点ウイルス(MNSV)と同一のゲノム構造を持つが、外被タンパク質遺伝子等の配列に相違があり、宿主域も若干異なることから、MNSVの新系統(スイカ系統)である。

  • キーワード:メロンえそ斑点ウイルス、スイカ系統、Carmovirus
  • 担当:中央農研・昆虫等媒介病害研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8093
  • 区分:共通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

鳥取県の葉や果実にえそ症状を示すスイカから、メロンえそ斑点ウイルス(MNSV)と思われる球状ウイルスが分離された。しかし、このウイルスは、従来のMNSV抗体との反応が弱く、宿主域も若干異なっていたことから、そのゲノム構造を明らかにして本ウイルスの分類学的位置を決定する。また、得られたゲノム情報を利用して、本ウイルスを特異的に検出するRT-PCR用プライマーを作製する。

成果の内容・特徴

  • 鳥取県のスイカから分離された本ウイルスは直径約30nmの球状ウイルスである。宿主範囲はウリ科植物に限られるが、既知のMNSVと異なり、メロン(品種:雅春秋系)では感染が認められない(図1)。
  • 本ウイルスは、MNSVと同様に、土壌中に生息するオルピディウム菌によって、媒介される(データ省略)。
  • 本ウイルスの全塩基数は4261で、5つのタンパク質遺伝子をコードしており、既知のMNSVとゲノム構造は同一である(Accession: AB232925)(図2)。
  • 既知のMNSVとアミノ酸配列を比較すると、複製酵素(p89)は約82%、外被タンパク質(p42)は約75%の相同性である(表1)。しかし、MNSVが属するCarmovirus属ウイルスの分類基準(Virus Taxonomy, 8th report of ICTV, 2005)では、複製酵素と外被タンパク質の相同性がそれぞれ52%以下、41%以下が別種の基準であることから、本ウイルスは、MNSVの新系統(スイカ系統)である。
  • 既知のMNSV外被タンパク質遺伝子と相同性の低い領域に設計したプライマー(MNSV-W-F:TCCGACTACCAACACGACTG、MNSV-W-R:TACCACCAGAGGTGA CAACG、増幅サイズ420bp)でRT-PCRを行うと、MNSVスイカ系統を特異的に検出できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • MNSVスイカ系統は、従来のMNSV抗体では検出が困難なため、本RT-PCRはMNSVスイカ系統の特異的検出・同定に有用である。
  • 従来のMNSVは、ユウガオに対する病原性が弱いため、ユウガオ台木スイカでは発生しにくい。

具体的データ

図1 MNSVスイカ系統のウイルス粒子(左)とメロンおよびスイカ子葉における病徴(右)

図2 MNSV スイカ系統のゲノム構造

表1 既知のMNSVとのアミノ酸配列の比較

表1 既知のMNSVとのアミノ酸配列の比較

その他

  • 研究課題名:病原ウイルス等の昆虫媒介機構の解明と防除技術の開発
  • 課題ID:214-e
  • 予算区分:基盤、菌媒介ウイルス
  • 研究期間:2005~2008年度
  • 研究担当者:大木健広、神田絢美、津田新哉
  • 発表論文等:Ohki et al. (2008) Phytopathology 98, 1165-1170