ホソヘリカメムシの休眠雄はフェロモンを生成・保持しない

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要約

短日で飼育した性的に未成熟なホソヘリカメムシ雄成虫は同種他個体を誘引せず、フェロモン成分を保持しない。

  • キーワード:ホソヘリカメムシ、フェロモン、雄成虫、休眠、ダイズ
  • 担当:中央農研・総合的害虫管理研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8939
  • 区分:共通基盤・病害虫(虫害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

カメムシ類雄成虫が放出するフェロモンの機能について、現在まで明確な結論は得られていない。ホソヘリカメムシでは、誘引された雄成虫が非休眠期のみにフェロモン成分の一部を保持することから、本種のフェロモンの機能として性的な誘引効果との関連が示唆された。そこで、雄成虫のフェロモン生成および放出(誘引)に及ぼす飼育日長(休眠性)の影響を明らかにし、性的成熟とフェロモン生成との関連について検討する。

成果の内容・特徴

  • 長日(16L8D)で飼育した雄成虫(以下、長日雄)が同種他個体を誘引するのに対し、短日(10L14D)で飼育した雄成虫(以下、短日雄)は同種他個体を全く誘引しない(表1)。
  • 長日雄は、半数以上の個体がフェロモンの必須成分tetradecyl isobutyrateと協力成分octadecyl isobutyrateを、ほとんどの個体が協力成分(E)-2-hexenyl (E)-2-hexenoateと(E)-2-hexenyl (Z)-3-hexenoateを保持する。これに対し、短日雄は上記4成分のいずれも全く保持しない(表2)。
  • 協力成分(E)-2-hexenyl hexanoateは飼育日長に関わらず全ての雄成虫が保持する(表2)。
  • 長日雄は外胚葉性付属線が発達し性成熟しているのに対し、短日雄は外胚葉性付属線が発達せず、生殖休眠状態にある(表3)。なお、外胚葉性付属腺は性成熟に関係する器官であるが、脂肪体は栄養蓄積のための器官で休眠状態の個体が良く発達させている。
  • 性的に未成熟な短日雄がフェロモン成分を保持しないことから、本フェロモンの機能として性的な誘引効果との関連が示唆される。

成果の活用面・留意点

  • 雄成虫のフェロモン生成・放出が性成熟と密接に関係しているという結果は、フェロモンを放出する雄成虫が繁殖(交尾)を目的としている可能性を強く示唆するものである。今後は,そのような観点から,本種のフェロモンを介在とした集団形成メカニズムの解明を進める必要がある。

具体的データ

表1 長日および短日で飼育したホヘソリカメムシ雄成虫の同種他個体に対する誘引性

表2 異なる飼育日長で飼育したホヘソリカメムシ雄成虫のフェロモン成分保持量

表3 誘引源として用いたホヘソリカメムシ雄成虫の体内器官(脂肪体と外胚葉性付属線の発達程度)

その他

  • 研究課題名:土着天敵等を活用した虫害抑制技術の開発
  • 課題ID:214-f
  • 予算区分:委託プロ(生物機能)、基盤研究
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:水谷信夫、和田節(九沖研)、安田哲也、遠藤信幸(九沖研)、山口卓宏(鹿児島農開総セ)、
                       守屋成一
  • 発表論文等:Mizutani N. et al. (2007) Appl. Entomol. Zool. 43 (4): 585-592