小麦収穫期の前進による降雨回避効果

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要約

小麦の一等比率に対する降水量の影響は収穫期間よりも登熟後期で大きい。収穫盛期を5日前進させたときの収穫期間の積算降水量は特に東海地方で大きく減少し、一等比率を大きく低下させる降水の確率は4.4年に一度から6.7年に一度に低下する。

  • キーワード:小麦、品質、収穫期、登熟期、降雨
  • 担当:中央農研・農業気象災害研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8418
  • 区分:共通基盤・農業気象
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

小麦の収穫期の降雨による品質の低下を回避するため、特に本州では梅雨入り前の収穫を目標とした収穫期の前進が課題とされている。降雨のパターンは地域で異なるために、各産地の小麦作期の気象条件に即した目標値の設定が必要となる。そこで、統計資料および気象データを基に、登熟期間および収穫期を早めた場合の降雨回避効果を検討する。

成果の内容・特徴

  • 登熟期間(出穂盛期から収穫盛期)を3分割した登熟前期、中期、後期および収穫期間(収穫始期から収穫終期)の積算降水量はいずれも一等比率との有意な相関が認められた。相関係数は登熟後期で最も高い(図1)。
  • 関東以西の産地では、登熟後期の積算降水量が100mm以上では一等比率が50%以下になる危険性が高い。九州では他の地域に比べて収穫期の降水による品質の低下が大きい。(図1)。
  • 収穫盛期が平年値から前後した場合の、登熟後期および収穫期間中の積算降水量のパターンには地域差がある。登熟後期の前進による降雨回避効果は収穫期に比べて小さく、この時期の降雨回避による一等比率の大幅な向上は期待できない(図2)。
  • 本州の温暖地、特に東海地方は他地域に比べて収穫期間の前進による降雨回避効果が高い。収穫盛期を平年値より5日前進させると、この地域で一等比率の低下が顕著になる150mm以上の再現期間は4.4年に一度から6.7年に一度に低下する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 降雨による品質低下対策としての早生品種の育種、生産地への早生品種の導入効果の判定値として利用できる。
  • ここでは降雨のみに着目したが、積算降水量単独の寄与率は低く、一等比率に寄与するその他の要因についても解明する必要がある。

具体的データ

図1 時期別の積算降水量と一等比率

図2 登熟後期・収穫盛期の遅速による降水量積算値の変動

図3 収穫期間の降水量の再現期間(東海地域、赤は5日前進、黒は平年、青は5日遅れ)

その他

  • 研究課題名:小麦の穂発芽警戒システムの開発
  • 課題ID:215c
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:中園 江
  • 発表論文等: