耕地雑草の個体群動態モデルプロトタイプ

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要約

本プロトタイプは輪作体系下や総合的防除による雑草の個体群動態を予測するモデルである。市販の表計算ソフト上で動作し、雑草埋土種子量および個体数の経年推移を簡便に投影でき、防除シナリオの策定や生態研究の仮説提示に利用できる。

  • キーワード:雑草個体群、動態モデル、シミュレーション、埋土種子、総合的防除
  • 担当:中央農研・雑草バイオタイプ・総合防除研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8426
  • 区分:共通基盤・雑草
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

耕地雑草の総合的管理対策を設計・提言するには、輪作体系や個別の防除手段が雑草の個体群動態に及ぼす影響を定量的に推測することが必要である。雑草の種子生産量、埋土種子の生存率、防除圧といったパラメータを組み合わせ、土地利用型作物における雑草の個体群動態を予測できる基本モデルを作成する。モデルを各地域の草種,栽培体系に簡易に適用させるため、市販の表計算ソフト上で利用できるようにする。

成果の内容・特徴

  • 本モデルは、パソコンで使用する表計算ワークシートで構成され、麦作用と水田輪作用がある。セル上に任意のパラメータ値を入力することで所定の栽培体系における雑草成熟個体数および埋土種子数の経年推移のシミュレーションが可能である。
  • 入力するパラメータは表1(麦作)、表2(水田輪作)に示す雑草の生態的特性および耕種操作によるその死滅率等である。それらの数値を入力すれば、その条件を継続した場合の成熟個体数、埋土種子数の推移が算出、グラフ上に反映される(図1、図2)。
  • 例えば、麦作の慣行体系で土壌処理剤(トリフルラリン剤による年内出芽集団の50%防除を想定)を処理した場合にカラスムギ密度の増加が不可避であること、夏不耕起による地表面種子の60%食害と遅播種による播種前出芽の20%防除との組合せは、土壌処理剤による99%防除に匹敵する密度抑制効果があると試算される(図1)。この試算結果は、現場の実態や過去の単年度の圃場試験結果と適合している。
  • 水田輪作条件でのダイズ作雑草について、表2に示すように畑期、水田期の埋土種子死滅率がそれぞれ20%、30%の草種で、土壌処理剤、茎葉処理剤による防除率をそれぞれ99%、80%、水稲作期には繁殖しないと仮定した場合、ダイズ連作では個体群は毎年増加し、3年に1回のダイズ作であっても漸増~微増すると試算される(図2)。この試算結果は、現場の実態や類似した過去の単年度の圃場試験結果と適合している。

成果の活用面・留意点

  • 本モデルは研究データ交換用Webサービス(http://cse.narc.affrc.go.jp/masai/weedmodel.html)で公開され、ユーザ登録すれば誰でも利用できる。
  • 本モデルはMicrosoft Excelが動作する環境で使用できる。
  • ユーザがファイル上のセルに異なる栽培体系、雑草種に応じたパラメータ値および漸化式を追加することで、さまざまな条件に拡張した動態シミュレーションが可能である。
  • モデルによる試算は総合的防除体系を導入した難防除雑草の順応的管理を進める場合の指針となる。
  • 耕地雑草の生態パラメータの多くが日本では実測されていない。そのため、本モデルはパラメータ推定研究に対する仮説提示ツールとしても有用である。

具体的データ

表1 麦作の雑草動態モデルに必要な入力パラメータとその数値例*

図1 夏不耕起等を活用したコムギ作の総合防体系におけるカラスムギの個体群動態試算例

表2 水田輪作の雑草動態モデルに必要な入力パラメータ*

図2 水田輪作体系における雑草の個体群動態試算例(オオイヌタデを想定した)

その他

  • 研究課題名:難防除雑草バイオタイプのまん延機構の解明及び総合防除技術の開発
  • 課題ID:214-b
  • 予算区分:基盤、交付金プロ(総合的雑草管理)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:浅井元朗、松田裕之(横浜国立大)