マルチラインにおけるイネいもち病流行予測システム

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

マルチラインに利用する同質遺伝子系統とイネいもち病菌レースの組合せを設定し、数十年単位でレース変動を計算することにより、系統の数、種類、混植比率、交替時期を決定できる。また、単年度の葉・穂いもちの病勢進展を計算により評価できる。

  • キーワード:マルチライン、スーパーレース、同質遺伝子系統、いもち病、ソフトウエア
  • 担当:中央農研・病害抵抗性研究チーム
  • 代表連絡先:電話025-523-4131
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・病害虫(病害)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

イネの減農薬栽培に有効なマルチラインを持続的に活用するためには、スーパーレースの出現を予測して、同質遺伝子系統の混植比率や系統交替の時期を決める必要がある。また、個々の圃場では単年度の発病程度を予測して、的確な防除を行う必要がある。 そこで、病原菌に対する宿主作物の抵抗性獲得とそれに対する病原菌の病原性獲得という共進化の過程を説明する、宿主-病原体共進化理論を応用したレースの長期変動予測モデルと、単年度の葉・穂いもちに対応した病勢進展予測モデルを開発し、それぞれをソフトウエアとして提供する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、いもち病菌レースの長期変動予測モデル、葉・穂いもち対応病勢進展予測モデルBLASTMUL のソフトウエアからなり、いずれもMS Windows上で作動する。
  • いもち病菌レースの長期変動は、系統とレースの組合せ、系統の交替、越冬確率、気象変動係数、病原性のコスト、突然変異頻度、病斑数等のパラメータの値を任意に設定し計算する(図1左)。結果は、グラフ表示され(図1上)、テキストファイルとしても保存できる。
  • いもち病菌レースの長期変動予測の計算結果は、過去における真性抵抗性品種罹病化の事例、新潟県および宮城県における長期間のレース頻度の変遷結果とよく合致する。
  • このことから、スーパーレースの出現時期を予測し、マルチラインを持続的に利用するための系統の数、種類、混植比率、交替時期を決定できる。
  • 葉・穂いもち対応BLASTMULによる単年度の病勢進展は、混植比率、圃場抵抗性、施肥水準、薬剤散布、気象変動等のパラメータの値を任意に設定し計算する(図2左)。結果はグラフ表示される(図2上)。これを単純化した簡易版BLASTMULも利用できる。
  • 葉・穂いもち対応BLASTMULの計算結果は、新潟県、宮城県および石川県における過去5年間延べ10事例の病勢進展結果とよく合致する。
  • このことから、単年度の葉・穂いもち病勢進展を予測し、出穂前に穂いもち防除の要否を判断できる。

成果の活用面・留意点

  • マルチラインの長期的な活用指針を策定する際に利用できる。
  • ソフトウエアは、中央農業総合研究センター北陸研究センターのウエブサイトからダウンロードできる。
  • 利用マニュアルは、ダウンロードしたソフトウエアのヘルプ機能を参照する。
  • ソフトウエアは、真性抵抗性品種の導入の際にも参考となる。

具体的データ

図1 いもち病菌レースの長期予測モデルの設定画面(左)と計算例(1000回試行の平均、上)

図2 穂いもち対応BLASTMULの入力画面(左)と穂いもち病勢進展の計算例(上)

その他

  • 研究課題名:マルチラインにおけるいもち病菌レースの短・長期変動予測モデルの開発
  • 課題ID:221-f
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2006-2008年度
  • 研究担当者:平八重一之、芦澤武人、藤田佳克、安田伸子( 中央研)、佐々木顕、中林潤( 総研大) 、
                       古賀博則、吉本玲子( 石川県大) 、笹原剛志、大場淳司、畑中教子( 宮城古川農試) 、
                       石川浩司、黒田智久、堀武志、佐藤秀明( 新潟農総研) 、塚本昇市( 石川農総研) 、
                       古河衛、渡辺貴弘( 福井農試)