抵抗性品種に対するツマグロヨコバイの加害性獲得に適応度低下は認められない
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要約
抵抗性イネ品種を加害するツマグロヨコバイのバイオタイプは、抵抗性品種に対する加害性の獲得によって、幼虫生存率、幼虫発育期間、成虫の生存日数、産卵前期間および総産卵数などの生活史形質に関して適応度の低下は認められない。
- キーワード:ツマグロヨコバイ、バイオタイプ、抵抗性品種、発育、産卵、適応度
- 担当:中央農研・総合的害虫管理研究チーム
- 代表連絡先:電話025-526-3243
- 区分:関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・病害虫(虫害)
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
抵抗性品種を利用した害虫管理技術は農薬使用量の低減や防除の省力化・低コスト化といった利点を持つが、抵抗性品種を加害する新しい虫の系統(バイオタイプ)の出現による抵抗性の崩壊が大きな問題となる。水稲害虫のツマグロヨコバイでは、実験室内で抵抗性品種を加害するバイオタイプが得られており、野外で抵抗性品種を栽培するとバイオタイプが出現する可能性がある。そのため、バイオタイプ出現による抵抗性の崩壊を防ぐには、バイオタイプに関する特性を明らかにし、それに対し有効な管理戦略を立てる必要がある。
抵抗性品種に加害性を持つバイオタイプは、加害性を持たない系統と比べて適応度が低い可能性がある。そこで、抵抗性イネ品種を加害するツマグロヨコバイのバイオタイプの発育や産卵能力等の生活史形質に関する適応度の差異とその程度を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ツマグロヨコバイ抵抗性遺伝子Grh1、Grh2、Grh3をそれぞれ保有する品種において、各品種に加害性を持つバイオタイプBiotype 1、Biotype 2、Biotype 3は、加害性を持たない系統(無選抜系統)と比べて、成虫の生存日数は長く、産卵前期間は短く、総産卵数は多い(表1)。
- 抵抗性遺伝子を持たない品種「日本晴」において、バイオタイプの幼虫生存率、幼虫発育期間は無選抜系統と比べて差がない(表2)。また、成虫の生存日数、産卵前期間、総産卵数は各バイオタイプと無選抜系統の間に差はなく(表3)、抵抗性品種に対する加害性の獲得は、生活史形質に関して適応度の低下を伴わない。
成果の活用面・留意点
- 抵抗性品種の広域単一栽培を避けることや、異なる抵抗性遺伝子を持つ品種や遺伝子を集積した系統の育成等、抵抗性品種の育成および普及に関する基礎的情報となる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:害虫抵抗性水稲に対するツマグロヨコバイ等のバイオタイプ発達管理技術の開発
- 課題ID:214-f
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2008年度
- 研究担当者:平江雅宏、鈴木芳人
- 発表論文等:平江ら(2008)応動昆、52(4):207-213