重粘土水田における暗渠排水能力の季節的変動と経年変化

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要約

重粘土水田の暗渠の排水能力は、代かきや収穫時の踏圧による土壌の攪乱や圧縮、乾燥収縮による亀裂の発達に対応して季節的に変動するとともに、疎水材の沈下やその上部土層の通水性の悪化により、経年的に低下する。

  • キーワード:暗渠、疎水材、亀裂、排水性、重粘土水田
  • 担当:中央農研・田畑輪換研究チーム
  • 代表連絡先:電話025-526-3233
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

施工後の年数が経過した暗渠では、排水機能が施工直後より大幅に低下することが問題となっている。本研究では、重粘土水稲連作田における暗渠排水速度を長期間実測すると同時に、土壌の乾燥状況、亀裂の進展、疎水材の深度を把握し、暗渠排水能力の季節的変動や経年変化とその主たる要因やメカニズムを解明することにより、暗渠の効果を長期にわたり持続させるための技術開発の基礎的知見を提示する。

成果の内容・特徴

  • 暗渠の排水能力は、季節的に大きく変動する。その変動は、0~11.5mm/h(湛水落水試験によりもっとも大きな変動があった試験区)と非常に大きな幅がある(図1)。
  • 暗渠の排水能力の季節的変動は、代かきや収穫作業による土壌の攪乱や、水管理による土壌の乾湿に起因する亀裂の消長に対応している(図1、図2)。
  • 暗渠の排水能力は、経年的に低下する。施工後3~4年経過すると10mm/h以上あった排水能力が、4mm/h以下まで低下する(図3)。
  • 暗渠の排水能力の経年的低下の主因としては、施工後の年数の経過に伴う疎水材層の沈下(疎水材上部土層の厚さの増大)があげられる。疎水材が深くなるほど、疎水材と連絡する亀裂の幅は狭くなり、暗渠の排水能力は低下する(図1、図4)。
  • 暗渠の排水能力を長期間にわたり維持するためには、疎水材層および上部の土層の通水性を良好な状態に維持することが重要である。

成果の活用面・留意点

  • 冬期間にほ場が湿潤もしくは湛水状態となる日本海側の重粘土水田における水稲連作条件下での調査結果である。各試験区は、側面を遮水した10×50mの試験水田であり、深さ45cmに内径50mmのコルゲート管がほ場長辺方向に1本埋設されている。施工時の疎水材層の幅は15cmで、疎水材には全層もみがらが用いられている。
  • 暗渠および地表の排水口を一旦閉じ、ほ場に湛水させた後、一気に暗渠のみから落水したときの排水開始時の排水速度(4mm排水時点)を暗渠排水能力と定義した。
  • 疎水材層上端が数cm低下すると、通水性が1/10~1/1000程度に低下することが知られている(吉田、足立(2005) 、農土論集235: 35-41.)。暗渠排水能力の改善には、疎水材部分の改修や、中干し時の地表排水を促進し、亀裂を十分発達させるほ場管理が有効である。

具体的データ

図1 暗渠排水能力の期別変化と推定される各時期の通水構造(2002 年)

図2 土壌水分ポテンシャルの期別最低値(2002年)

図3 水稲が作付けられた水田における暗渠排水能力の経年変化

図4 暗渠疎水材層の経年的沈下(平均+-SD)

その他

  • 研究課題名:田畑輪換の継続に伴う大豆生産力の低下要因の解明と対策技術の開発
  • 課題ID:211-d
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:足立一日出、吉田修一郎、谷本岳
  • 発表論文等:吉田ら(2008)農業農村工学会論文集、257 p.51-56.