排水不良転換畑における地下排水改善技術とその効果の持続性

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要約

暗渠排水機能が低下した重粘土質水田転換畑では、本暗渠とモミガラ簡易暗渠とを縦型暗渠で連結させることによって、暗渠排水は改善され、鋤床面上の滞水は減少する。しかし、この効果は縦型暗渠の目詰まり等によって2年間にとどまる。

  • キーワード:排水、暗渠、ダイズ、鋤床上の滞水、排水機能の持続性
  • 担当:中央農研・北陸水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話025-526-3233
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・生産環境部会
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

重粘で湿性な土壌においては暗渠が施工されるが、暗渠疎水材モミガラ層の断面縮小、目詰まりや腐敗によって多くの水田で排水機能が低下している。このような排水不良の水田においては、ダイズの湿害回避のために畝立て栽培されるが、畝間の滞水によって、土壌環境の悪化等、ダイズ栽培に悪影響を及ぼす。そこで、本暗渠にモミガラ簡易暗渠と縦型暗渠を連結する排水改善技術を開発し、鋤床面の滞水時間および湛水深への効果並びに効果の持続性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本排水改善技術は、縦型暗渠を用いて、モミガラ簡易暗渠と既存の本暗渠を連結するものである(図1)。すなわち、既存の本暗渠に直交して、排水溝の施工に用いられるオーガトレンチャーで幅35cm、深さ25~30cmで作溝し、溝にモミガラを田面まで投入し、掘削土を戻し、踏み固めるモミガラ簡易暗渠と、モミガラ簡易暗渠の作溝直後、モミガラ投入前に、本暗渠との交点において、エンジンオーガでφ10cmの穴を本暗渠管まで掘削しモミガラを投入する縦型暗渠を施工する。
  • 大きな降雨(2008年7月8日)に対する鋤床上の湛水深の変化をみると、未施工でほとんど見られなかった暗渠排水が施工によって大きく向上するため、鋤床上の湛水深も速やかに低下する(図2)。
  • 大きな降雨に対する暗渠の排水能力を表わすピーク1時間の排水量は、施工1年目(2007年)の梅雨時期で3mm/h、2年目で2mm/h程度と未施工に比べて大きく増加する。しかし、3年目には、暗渠排水量は大きく低下し、排水改善効果はほとんど見られない(図3)。
  • 北陸地域の梅雨期間にあたる6月下旬から7月における鋤床上の湛水深は、施工後2年間は排水良好な圃場に近い程度までに軽減されるが、3年目には未施工と同様に湛水が長く継続した(図4)。
  • 3年目の暗渠排水機能の低下は、ダイズ収穫後の縦型暗渠直上の浸透量調査や栽培期間中の機械作業後の畝間湛水状況から、縦型暗渠等のモミガラの目詰まりや土壌の練り返しによる透水性の悪化が考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は排水不良の転換ダイズ作における排水対策として活用する。
  • 本成果は粘土含有量45~50%の重埴土で、鋤床から0~30cmの深さにグライ層の上限がみられる細粒質グライ低地土におけるダイズの耕うん同時畝立て播種栽培時の結果で、収量は排水改善区、未施工区で、2007年253、236kg/10a、2008年343、358kg/10a、2009年300、292kg/10aであった。
  • 本成果の本暗渠間隔は5m、モミガラ簡易暗渠の間隔は10m(一部5m間隔)である。
  • モミガラ簡易暗渠と縦型暗渠の施工にはそれぞれ3名の作業員で約6分/10m、2分/1カ所である。

具体的データ

図1 調査圃場の概要

図2 降雨時の暗渠排水量と鋤床上の湛水深の変化

図3 大きな降雨時のピーク暗渠排水量の変化

図4 鋤床上の日平均湛水深および日降水量の推移

その他

  • 研究課題名:北陸地域における高生産性水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:211k.4
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:足立一日出、大野智史、古畑昌巳