バイオマス利用のための稲わらの切断長と圃場予乾時の水分低下
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要約
自脱コンバインでの水稲の穀実収穫と同時に、バイオマス原料として稲わらを圃場に刈り落として予乾・収集する場合、稲わらを60mm程度まで短く切断すると、圃場予乾の際の水分低下が遅くなる。
- キーワード:稲わら、バイオマス利用、刈り落とし、予乾、自脱コンバイン
- 担当:中央農研・北陸大規模水田作研究チーム
- 代表連絡先:電話025-526-3218
- 区分:関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・総合研究(飼料イネ)、バイオマス
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
水稲の多段階利用のひとつとして稲わらのバイオマス利用が進められており、バイオエタノール原料やバイオプラスチック原料としての利用が注目されている。しかし水稲穀実生産の副産物として得られる稲わらは、収穫直後には水分が高いため圃場での予乾が重要であり、特に収穫時期以降に好天が続きにくい北陸地域では迅速な乾燥促進が求められている。そこで効率的な稲わら収集方法を検討するために、自脱コンバインによる稲わらの刈り落とし作業を対象に、切断長による水分変化について検討する。
成果の内容・特徴
- 自脱コンバインで穀実収穫と同時に稲わらを刈り落として圃場予乾すると(図1)、稲わら水分は刈り落とし直後から低下し始め、夜間にほぼ一定かやや上昇、日中に低下というサイクルを繰り返しながら、全体に徐々に低下していく(図2)。
- 自脱コンバインによる稲わら切断処理(60mm切断、120mm切断、無切断)で比較すると、切断長が短いものほど水分低下が遅くなる(図2(a))。切断長の短い区ほど刈り落としたわらの堆積高さが低かったこと(表1)から、長いわらは刈り株に載るため通気性が良く乾燥が促進されるのに対し、切断長60mmでは直接地面に接して水分低下が遅れることが示される。
- 「コシヒカリ」のような一般水稲の場合、120mm切断では60mm切断と無切断の中間の傾向を示す。特に、刈り取り時期が遅くなると、120mm切断でも無切断と同様の水分低下が得られる(データ省略)。
- 「北陸193号」のような晩生多収品種では、無切断でも乾燥が進みにくい場合がある。単位面積当たりのわら収量が著しく多くなること(表2)と、収穫時期が遅くなり気温が低下するためである。このような場合、切断長が短いと直接地面に接してしまい、切断長が長いとわら総量が多いために通気性が悪くなるため、中間的な切断長で最も速い水分低下が得られる(図2(b))。
- 以上から、一般水稲の稲わらをバイオマス利用するために自脱コンバインで刈り落として圃場予乾する場合、水分低下を早めるためには、排わらカッタを使用せずに無切断で刈り落としたほうが良い。
成果の活用面・留意点
- 稲わらをバイオマス利用する場合、収集方法を選定する際に参考になる。
- 通常の自脱コンバインにより一般的な刈り高さ(10cm程度)で収穫を行いながら、稲わらを結束せずに機体後方に放出した結果である。
- 高刈りや立て置き方式での乾燥促進効果については、別途検討する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:飼料イネ及び燃料用イネの生産に関わる効率的機械作業技術の開発
- 課題ID:212-b.2
- 予算区分:多用途水稲超多収
- 研究期間:2008~2009年度
- 研究担当者:元林浩太、松村 修