バイオディーゼル生産が温室効果ガス排出量を削減するための条件

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要約

ナタネを生産し、廃食油を燃料化する資源循環システムの稼働に伴う温室効果ガス排出量を計測する。当該システムが温室効果ガス排出量を削減するためには、10a当たり200kg以上のナタネ収量とナタネ廃食油の7割以上の回収が条件となる。

  • キーワード:ナタネ、バイオディーゼル、温室効果ガス、単収、廃油回収率
  • 担当:中央農研・環境影響評価研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8850
  • 区分:共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

燃料の地産地消を目的とし、ナタネ油を地域内で循環利用する取組が全国各地で進められている。これらは、ナタネ生産の収支、搾油所や油の販売先の確保、廃食油回収の効率化等の課題に直面している。 本研究では、燃料自給に向けた資源循環の活動を対象として、環境負荷削減の実現に必要とされる技術条件を分析するとともに収益性の検討も行う。

成果の内容・特徴

  • システムIは搾油後の油を直接燃料とするSVO(Straight Vegetable Oil)生産システムである(図1左)。システムIの評価により、ナタネ栽培による燃料生産能力のポテンシャルが計測される。 SVO生産によるライフサイクルの温室効果ガス排出量(LC-GHG)収支を計測する。10a当たり資材費1.36万円(主な資材利用量:種子0.5kg、肥料N17kg、タンカル160kg、軽油18.5L、灯油1.2L、ガソリン4.8L)、農機具費1.2万円のナタネ栽培技術を想定した場合、単収100kgのケースではLC-GHGは145kg/10a増加するが、収量200kgのケースでは27kg/10a削減される(図2)。
  • システムIIは地域内でナタネ油を生産し、食用利用した後に廃食油を燃料化する資源循環システムである(図1右)。生産地と搾油所の距離を片道50km(往復100km)、1回当たりの廃油回収に必要な距離を30km、廃油回収量を60Lと仮定し、システム稼働に伴うLC-GHG量を推定する。 図3はLC-GHG削減を可能とする(ナタネ油の廃油回収率,ナタネ単収)の組合せを示している。曲線の右上領域では資源循環システムの稼働によりLC-GHGが削減される。 条件良好な水田におけるナタネ単収が約200kg/10aであることを考慮すれば、当面の技術目標は、廃油回収率7割以上、単収200kg以上となる。なおLC-GHG削減量は(廃油回収率70%、単収200kg)のケースで10a当たり15.7kgである。
  • ナタネの平均単収は100kg前後と低水準だが、良好な圃場条件では200kgの収穫も可能である。2010年度以降の各種政策の変更を勘案すると、単収200kgの実現が収益確保の目安となる(図4)。

成果の活用面・留意点

本成果は、機械化されたナタネ生産を対象としている。

具体的データ

図1 ナタネ油の燃料化システム

図2 システムIの温室効果ガス排出量

図3 システムIIが温室効果ガスを削減するための条件

図4 ナタネ生産の収益構造 ( 円 /10a)

その他

  • 研究課題名:環境影響の統合化と環境会計による農業生産活動評価手法の開発
  • 課題ID:214a
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:小野洋、野中章久、古川茂樹(福島県)