圃場分散下での大規模水田作経営における圃場間移動の実態

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要約

大規模水田作経営においては代かきおよび収穫作業時間に占める圃場間移動時間の割合が11~15%に達しているが、これには孤立圃場数割合が32~66%と多いことに加え、特に代かきでは水利施設の不十分さから計画的な作業が実施できないためである。

  • キーワード:面的集積、GPS、圃場分散、作業時間、水田作
  • 担当:中央農研・農業経営研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8481
  • 区分:共通基盤・経営、総合研究(輪作)、関東東海北陸農業・経営
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

農地法が改正され、農地の面的集積が進められようとしている。しかし、面的集積によりどれだけ作業効率が改善されるかという点についての具体的なデータの蓄積は不十分である。そのため、携帯型GPS(2007年主要研究成果)を用いて、大規模な水田作経営における分散状況下での圃場間移動の実態を把握する。

成果の内容・特徴

  • 対象事例はいずれも経営面積が30~70haに達する大規模経営であり、最も遠い圃場は3~7kmの範囲に位置する。水利施設も、ポンプ揚水及び開水路(A経営)やコンクリート開水路(B経営、C経営)と整っていない(表1)。
  • 対象事例では、規模拡大に伴い延べ作業圃場数が37枚から、C経営の大豆収穫では145枚に及ぶ。しかし、それらの多くは連坦しておらず、孤立圃場数割合は32~66%に達している。そのため頻繁な圃場間移動が必要となっており、延べ作業圃場数に対する移動回数割合(%)欄に示すように、作業する圃場数とほぼ同じだけ圃場間移動を行っている(表2)。
  • 代かき作業では、1日平均の圃場間移動時間は0.75~1.1時間に達しており、移動のみに費やしている時間も多い(表2)。特に、本来、まとまった場所ごとに作業を行うのが効率的であるのに対して、圃場への給水が計画的に実施できないことから代かきを行う圃場が飛び飛びとなるなど(図1)、水利条件の悪さが作業遂行をより非効率にしている。
  • 作業時間全体に占める移動時間の割合を経営別作業別に見ると11~15%、平均で12%となっている。そして、いずれも孤立圃場が多い経営事例の中で、相対的に圃場条件の劣るA経営において圃場間の移動時間割合が高い(表3)。
  • したがって、圃場の面的集積が進めば、それぞれの機械作業時間は、圃場間移動時間の削減から10%近く削減することが可能になるが、そこでは、圃場の連担化と併せて水利条件の整備も同時に進めていくことが重要である。

成果の活用面・留意点

  • 分析結果は北関東平坦水田地帯の圃場枚数の多い水田作経営を対象としたものである。
  • GPSナビゲータを用いて作業機が稼働している位置及び時間を1秒ごとに記録し、地図ソフトを用いてパソコンに表示しながら画面に添って1秒毎の作業機の動きを読み取るという方式で圃場間の移動時間を把握した。

具体的データ

表1 大規模水田作経営の経営概要と圃場条件

表2 圃場間移動の回数と時間

表3 作業時間に占める移動時間の割合

図1 代かき作業の実施状況(A経営)

その他

  • 研究課題名:関東・東海・北陸地域における個別経営体の総合的経営管理手法及び多様な主体間連携による地域活性化手法の開発
  • 中課題整理番号:211a.3
  • 予算区分:交付金(農作業ロボット)、委託プロ(担い手)
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:梅本雅、松本浩一、松尾和之
  • 発表論文等:梅本(2010)関東東海農業経営研究、100:55-58