ダイズ「エンレイ」の梅雨期の湿害による減収程度は葉色により予測できる
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要約
ダイズは湿害を受けると葉色と光合成速度が低下して、栄養生長量が不足するために減収する。梅雨期において畝間に湛水してから10日前後のSPAD値と子実重との間には正の相関関係が認められ、この時期のSPAD値により湿害による減収程度が予測できる。
- キーワード:ダイズ、湿害、葉色、主茎長、減収
- 担当:中央農研・農業気象災害研究チーム、北陸水田輪作研究チーム
- 代表連絡先:電話025-526-3236
- 区分:関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作、共通基盤・農業気象
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
北陸地域に多く分布する重粘土転換畑のダイズは栄養生長期が梅雨期と重なるため湿害が多発し、収量を不安定化させる要因となっている。そこで、主力ダイズ品種「エンレイ」の圃場の滞水条件と湿害の発生およびその影響を解明し、ダイズの栄養生長期における湿害程度の指標を検討する。
成果の内容・特徴
- 梅雨期に相当する6月下旬から湛水処理をおこなうと、葉色(SPAD値)が低下するとともに、ダイズの栄養生長の指標である主茎長の伸長量が低下し、主茎長が短くなる。畝間の湛水面から畝上までの高さで表す処理強度が強いほど葉色の低下程度は大きく、湛水処理の終了後も回復が遅い。展開第3葉の湛水処理開始後10日前後からのSPAD値と収量との相関は高い(図1)。
- 北陸地域における梅雨~梅雨明け期には、湛水処理の時期や処理による湿害程度に関係なく、展開上位3葉の葉色と光合成速度の間には正の相関関係が認められる(図2)。
- 展開第3葉の葉色の低下が顕著になる湛水処理開始後10日前後のSPAD値と主茎長の増加速度との間には正の相関が認められる。湿害によって葉色とともに光合成速度が低下し、乾物生産が減少した結果、主茎長の増加速度が低下した判断される(図2、図3)。
- 湛水処理開始後10日前後のSPAD値と子実重との間には正の相関関係が認められることから、SPAD値によって湿害による減収程度を予測できる。供試圃場とは異なる圃場においても、子実重の絶対値は異なるが同様の関係が認められる(図4)。
成果の活用面・留意点
- 北陸地域における畝間に湛水するような排水不良条件での水田転換ダイズ作における湿害の判定指標として活用する。
- 本成果は北陸研究センターの重粘土水田にダイズ「エンレイ」を5月第6半旬に播種(栽植密度13.3本/m2)、6月下旬から約1ヶ月間畝間に入水し、湛水処理を行い得られた結果であり、結果の適用には圃場・栽培条件について考慮する必要がある。
- 本成果は、茎疫病、黒根腐病等の明らかな病害がなく、根の酸素不足等による養分吸収の低下が原因と判断される場合に適用できる。水没等の強い湿害を受けた場合や病害の発生時には適用されない。
具体的データ




その他
- 研究課題名:北陸地域における高生産性水田輪作システムの確立
- 中課題整理番号:215c
- 予算区分:実用技術、基盤
- 研究期間:2007~2009年度
- 研究担当者:小南靖弘、田渕公清、中野聡史