露地野菜の市町村別生産統計と市況情報から詳細な生産実態が読み取れる

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要約

市町村別季節別生産統計と青果物市況情報とを用いると、露地野菜産地の位置を市町村単位、出荷期を一週間単位で特定することができる。また、発育段階予測モデルを適用すると生育時の気象環境を特定でき、気象が収穫期・収量に及ぼす影響を解析できる。

  • キーワード:露地野菜、収穫期予測、収量予測、発育段階予測モデル、収量構成要素
  • 担当:中央農研・農業気象災害研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8946
  • 区分:共通基盤・農業気象
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

野菜の収量・生産予測が40年以上に渡って試みられているが、未だに成功していない。その原因は、予測法の不備でなく、予測に用いるデータが県別季節別の生産統計や栽培試験結果で、産地の生産実態を十分に反映していないことによると考えた。そこで、産地の生産実態を的確に反映して収穫期・収量予測を可能とするために、産地の位置、作期、作付面積の推移や収量構成要素に係わる公開情報を入手して、生育期間中の気象環境と収穫期・単位面積当たり収量との関係の解析に耐え得る詳細なデータを得る方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 県毎に設置されている農政事務所が調査する市町村別季節別野菜生産統計を用いると、季節別の品目毎の作付面積、収穫量、出荷量を知ることができる。多くの県で図1のように産地が特定の市町村に集中している。
  • 農林水産省が中央卸売市場の入荷統計として公表している青果物市況情報を用いると、図2のように県別の短期間の出荷量を知ることができる。図2では、日別の統計値を市場が休みとなる日の影響を除去するために週別に積算している。
  • 産地が県毎に特定の地域に集中していることから、県毎の出荷量から産地の出荷量を推定できる。そして、産地の市町村別季節別生産統計の出荷量と収穫量の比から、青果物市況情報を用いて産地の短期的な収穫量も推定できる。
  • 産地の位置が市町村規模で推定できるためにリアルタイムメッシュ気象値で気象環境を推定でき、10a当たり収量と発育段階予測モデルを用いることで出荷日・市場出荷量から定植日と定植面積を推定できる。年度毎の定植面積の推定値を平均することで、図3に示すように定植面積の推移の平年パターンを推定できる。
  • 以上の結果、定植期と収穫期、生育時に遭遇する気象環境が特定できるだけでなく、それぞれの定植期の定植面積も推定可能となり、産地の生産実態を詳細に推定できる。
  • 青果市況情報には、入荷量だけでなく、階級(サイズ等)の情報も付加されるために、収量構成要素(球数×球重)レベルで図4のように解析できる。キャベツでは、圃場全体の一球重が正規分布すると仮定すると、豊作年は、平均値は大きいが分散は小さく、凶作年は、平均値は小さいが分散は大きいことが明らかになる。これより、収量予測では、一球重の平均値と分散に着目することが重要であることも公開情報から示される。

成果の活用面・留意点

  • 品目や作期によっては、県内に複数の産地が存在して、県別に整理された青果物市況情報の利用が困難になる場合がある。
  • 正確な定植期の推定には、発育段階予測モデルを産地や季節で調整する必要がある。
  • 発育段階予測モデルについては、露地野菜適作判定支援システム(平成16年成果情報)を参考にされたい。
  • 対象としたのはキャベツ、ハクサイ、ダイコン、レタスの4品目である。

具体的データ

図1 平成 18 年産春どりキャベツの市町村別生産量

図2 キャベツの県別市場出荷量

図3 市場出荷量と収量から推定した千葉県のキャベツの日別定植面積の推移

図4 青果物市況情報の階級情報から推定した熊本県産 9 月出荷キャベツの一球重と球数の累積値

その他

  • 研究課題名:高品質安定生産のための農業気象災害警戒システムの開発
  • 中課題整理番号:215c
  • 予算区分:基盤、委託プロ(園芸評価)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:大原 源二