飼料ロールベールを牛に無駄なく給与できる可搬給飼柵

要約

圃場や放牧地においてロールベールを給飼する際に、ロールベールに上面から被せる枠型柵で、軽量で簡易に移動・設置できる。稲発酵粗飼料の細断ロールベール給与に用いると、残飼量を削減でき、給与の無駄を少なくできる。

  • キーワード:稲発酵粗飼料、給飼、軽労化、放牧、ロールベール
  • 担当:中央農研・関東飼料イネ研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8856
  • 区分:共通基盤・総合研究、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい


  水田の有効活用、飼料自給率の向上、家畜飼養の省力化を実現するため、水田の放牧利用が行われている。水分含量の高い稲発酵粗飼料は畜舎への運搬や家畜への給飼作業の負担が大きいばかりでなく、運搬の際に多量の燃料を消費し、環境面からも負荷が高い。一方、牧草に依存した季節放牧では冬季は畜舎で全ての家畜を飼養せざるを得ない。このような状況を改善するために飼料イネや牧草を組み合わせて周年放牧に取り組んでいるが、冬季に稲発酵粗飼料を放牧地や圃場で給与する場合、簡便な給飼方法や残飼の削減が課題となっている。そこで、野外でも給飼可能な可搬給飼柵を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「いつでも、どこでも、だれにでも」をコンセプトに開発した給飼柵で、直径2.2m、高さ1.0-1.2mの円柱型ステンレス製柵、人力で移動可能な重量(最軽量タイプ29kg)である(図1)。家畜への給飼は、本装置をロールベールの上から被せて使用する。
  • 軽量のため、給飼の際に牛の力で簡単に動くが、むしろ動くことで給飼柵への物理的衝撃を緩和する。また、給飼柵の下方にある可動式の木板製ストッパーにより飼料の漏出を削減でき(図2)、細断ロールベールの稲発酵粗飼料では、食べ残し割合が1.7%まで削減できる(表1)。牛の力によってステンレス製柵が壊れる前に木板製ストッパーが壊れる仕様になっている。
  • 放牧に興味がある農家や放牧初心者の農家が牧草草量や餌不足を心配することなく、放牧できる環境を提供するため、放牧飼養の推進や飼養規模拡大に貢献する。

成果の活用面・留意点

  • 給飼に際しては、稲発酵粗飼料だけではなく、牧草ロールベール・乾草・補助飼料の給与も可能である。また、冬季放牧以外に放牧馴致等の場面で活用できる。ただし、現時点では、非細断型ロールベールの残飼データは取得していない。
  • ロールベールを収穫時または搬入時に適切に配置することで、給飼毎に重機を稼働させる必要がない。したがって、重機を保有していない耕種農家でも放牧でき、また、放牧場所が家から離れていても飼養しやすい。転がして被せるだけの作業のため、軽労化が図れ、成人男性並みの力が無くても給飼作業に携われる。飼料や堆肥の運搬、給飼や家畜排せつ物処理の作業が軽減できる。
  • 本装置は既に受注生産されている。

具体的データ

可搬給飼柵を用いた給飼

可搬給飼柵 概略図

給飼柵・ストッパーの有無による稲発酵粗飼料の食べ残し割合

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術および乳牛・肉用牛への給与技術の確立
  • 中課題整理番号:212b.3
  • 予算区分:基盤、交付金プロ(飼料イネ周年放牧)
  • 研究期間:2009-2010
  • 研究担当者:江波戸宗大、千田雅之