DAS-ELISA法によるウリ類退緑黄化ウイルスの簡易血清診断法

要約

ウリ類退緑黄化ウイルスに対する抗血清を用いて新規に開発したDAS-ELISA検定試薬は、メロン、キュウリ、スイカの各種罹病葉を的確に診断できる。

  • キーワード:CCYV、クリニウイルス、DAS-ELISA、高感度検出、メロン、キュウリ、スイカ
  • 担当:中央農研・昆虫等媒介病害研究チーム、九州沖縄農研・暖地施設野菜花き研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8481
  • 区分:共通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・病害虫(病害)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

タバココナジラミ媒介性のウリ類退緑黄化ウイルス(CCYV)は、メロンとキュウリの退緑黄化病およびスイカの退緑えそ病を引き起こす。これまでに、研究機関で多用されている遺伝子診断法(行徳ら、2009)は開発されたが、一方で、営農指導員等生産現場からは既に広く普及している血清学的診断法が求められていた。そこで、DAS-ELISA(double antibody sandwich-enzyme linked immunoassay)法に基づく診断法を開発するため、CCYVのメジャー外被タンパク質(CP)に対する抗血清をもとにしてDAS-ELISA検定試薬を開発した。さらに、感度の高い検出条件等の検討を行い、農業現場での診断技術としての実用性を評価した。

成果の内容・特徴

  • CCYVのCP全長を、glutathione S-transferase(GST)との融合タンパク質として大腸菌で発現させ、その精製タンパク質を抗原として作製したウサギ抗血清は、ウェスタンブロットでCCYV感染メロン葉からCPを特異的に検出できる(図1)。
  • DAS-ELISA検定試薬を用いてキュウリ葉をサンプルとして診断を行うと、健全葉での非特異反応はほとんどなく、CCYV感染キュウリ葉からはその10倍程度高い吸光度が得られる。サンプルの希釈倍率は10?100倍が適当である。また、サンプリング部位は黄色斑点葉または退緑斑点葉が最も検出感度が高く、完全に黄化した葉ではやや低くなる(図2)。RT-PCR法と異なり無病徴葉からの検出は困難である(図3)。
  • 感染葉の磨砕用バッファーにはPBST(0.05%界面活性剤入りリン酸緩衝生理食塩水)を用いる。50 mM炭酸緩衝液(pH9.6)や0.5 M クエン酸3ナトリウムでは検出感度が劣る(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本DAS-ELISA検定試薬は(社)日本植物防疫協会から入手できる(1,000検体あたり21,000円)。http://www.jppa.or.jp/kenkyusho/virus_html/ccyv.htm
  • 本試薬は、生産圃場において発生するCCYVによるメロン、キュウリの退緑黄化病およびスイカの退緑えそ病の診断に利用できる。本診断法は、既に普及しているDAS-ELISA法が基本であることから、農業改良普及センターや病害虫防除所等営農指導での利用に適している。
  • 本抗血清は、CCYVと同じクリニウイルス属でキュウリの黄化病を引き起こすビートシュードイエロースウイルス(BPYV)とは反応しない。
  • サンプル葉として、-80°Cで1年間凍結保存した葉も使用できる。
  • 本抗血清およびDAS-ELSIA試薬はGSTに対する抗体も含むが、診断には影響しない。

具体的データ

ウェスタンブロットによるメロン葉からのCCYVの検出。 Hは健全、CはCCYV感染葉。キュウリ葉の症状および希釈倍率の違いによるDAS-ELISAの吸光度。エラーバーは標準偏差を示す。

キュウリ葉の発病程度ごとのウイルスの検出結果。斜線の左はDAS-ELISA、右はRT-PCRによるもの。図4.磨砕用バッファーの違いによる検出感度の比較。エラーバーは標準偏差を示す。

その他

  • 研究課題名:病原ウイルス等の昆虫等媒介機構の解明と防除技術の開発
  • 中課題整理番号:214e
  • 予算区分: 基盤、実用技術
  • 研究期間:2006?2009年度
  • 研究担当者:久保田健嗣、河野敏郎(日植防研)、奥田充、西八束(鹿児島県)、宇杉富雄、津田新哉
  • 発表論文等:1) Kubota K. et al. (2011) J. Gen. Plant Pathol. 77:116-120
                       2) 久保田健嗣 (2010) 植物防疫 64:814-817