経営指標から環境指標を計算する簡易LCAプログラム
要約
経営指標を入力することにより、標準的経営モデルの環境指標(温室効果ガス排出量、エネルギー投入量)を推計する簡易LCAプログラムである。入力ワークシートにデータを入力することにより、水稲作・野菜作の環境指標を簡易に求めることができる。
- キーワード:LCA、温室効果ガス排出量、エネルギー投入量、経営指標、環境指標
- 担当:中央農研・環境影響評価研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8481
- 区分:関東東海北陸農業・経営
- 分類:技術及び行政・普及
背景・ねらい
環境保全型農業、有機農業等に関する施策や実践の増加を背景として、農業生産システムの環境影響を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)への関心が高まっている。しかしながら、厳密なデータの積み上げによるLCAは、多くの場合に時間とコストを要する。そこで、農業生産システムの温室効果ガス排出量等を短時間で推計したい場合に有効な、簡易LCAプログラムを作成する。
成果の内容・特徴
- 都道府県の普及指導事業等で用いられる経営指標を入力することにより、標準的経営モデルの環境影響を示す指標(温室効果ガス排出量、エネルギー投入量)を推計する簡易LCAプログラム(エクセルファイル)である(図1)。水稲作と野菜作を対象とする。
- ワークシート「経営指標(入力)」に必要なデータを入力することにより、ワークシート「環境指標(エネルギー投入量)」および「環境指標(温室効果ガス排出量)」に計算結果が出力される。
- 入力するデータは、収量、化石燃料・電力消費、農業機械、施設、肥料、農薬、種苗、資材等である。入力は表形式で行い、肥料を例にとると、肥料名、使用量、費用、窒素含量等を入力する書式となっている(表1)。
- 出力として得られる環境指標(エネルギー投入量、温室効果ガス排出量)は、田面・畑面からの直接排出、製造時の排出等の内訳別に示すことができる(表2)。
- 使用例として、トマト栽培の温室効果ガス排出量を推計した例を示す(図2)。促成、半促成、トンネル早熟の順に温室効果ガス排出量が多いこと、促成と半促成における排出量の大部分が加温に起因することがわかる。
成果の活用面・留意点
- プログラム(水稲作用、野菜作用)は、中央農業総合研究センターのホームページ等から入手可能である。
- 研究プロジェクトの初期段階で環境影響を概算する場合、限られた時間で環境影響を推計したい場合等に有効なプログラムである。
- 産業連関表に基づく排出係数(温室効果ガス排出量、エネルギー投入量)を用いており、開発技術の詳細な分析を行う場合には、ライフサイクルインベントリデータベースを利用することが望ましい。
- 田面・畑面からの直接排出等は、日本国温室効果ガスインベントリに基づいている。
- 経営指標は、「農業経営指標」、「技術・経営指標」、「経済性標準指標」、「標準技術体系」、「投入産出表」等の名称で呼ばれるデータを指す。
具体的データ
その他
- 研究課題名:環境影響の統合化と環境会計による農業生産活動評価手法の開発
- 中課題整理番号:214a
- 予算区分:交付金プロ(日本型有機農業、半閉鎖温室)、科研費
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:林清忠